「三流のすすめ」を読んで

能楽師の安田登氏による「三流」という生き方を提案する一冊。現代では、「一流」というのが、目指すべき人物像として提示されます。そこに対して、安田氏は自身の人生を一つの例とし、そこに違う選択肢を提示します。「三流」という生き方。それを安田氏は提案します。人生を楽しむ、その生き方として「三流」として生きる方法を、本書では提案します。「三流」とは、どういう意味なのか。そのことを安田氏は過去の用例を参照し、解説します。一流、二流、三流の「流」とは、「流派」であり、「三流」とは、「いろいろなことをする人」と説明します。本書では、三流とはどういう生き方なのか、ということを過去の人物を参照しながら、解説をしていきます。三流という人の色々なことに目移りをしながら、そのことに没入し、行動していく、という生き方。目移りするからこそ、ひとつひとつのことはものにならない。三流の人は、「ものにならない」ということを知っている。行為そのものに没頭していく。そのような生き方が、どういうことなのか、ということを過去の書物、鶉衣、論語、中庸、人物志から読み解きます。この中で重要になるのが、人物志です。そこで体系的に捉えられる人物像から、三流の人物とは、どのように捉えることができるのか、ということを明らかにします。三流人のありようというのを示したあと、著者の実践する「三流」の生き方を示します。それは、ある意味、その方法が参考になる、というよりは、その考えが参考になる生き方です。具体的にどうするかは、個人に委ねられています。本書の提案する生き方、心構えは、現代を生きる上で、多くの人に参考になるものではないかと思います。

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