「ダイエット幻想」を読んで

ダイエットにまつわる様々なことを文化人類学の視点から考えていくのが、本書です。本書は、三つの内容から構成されています。痩せたいという気持ちと現代社会の矛盾、女性と痩せたい気持ちとの関係、食べ物や身体を数字で捉えることの危険性。食べることと生きることを考えさせられる内容です。本書は、ダイエットを否定するわけではなく、ダイエットに振り回されないために、こういうことを知って、その上で、ダイエットをするといいよ、と、そのための処方箋です。自分らしく生きる、というと、ありがちな言葉になりますが、本書は「自分らしく」という言葉の矛盾を示し、「ラインを描く」という自分らしさの提示と、生き方のための処方箋にもなっています。切り口はダイエットですが、生き辛さのようなものを感じている人にも、救われ方のある本だと思います。

「ダイエットの語源は生き方」という本書の最終章の言葉と、そこで語られる言葉は、一読して欲しい内容です。否応なく、自分を点として捉えようとする社会の中で、自分をラインとして捉え、そのラインが自分らしさだとすること。他者と踏み跡を刻みながら歩いていくこと。そのための考え方を身につけていくこと。その大事さが、本書を読むと分かるのではないかと思います。

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