「歴史の中の感情」を読んで

マックス・プランク人間発達研究所感情史研究センターのフレーフェルト氏による「名誉」と「共感」という感情が、歴史の中でどのような変遷を辿ったのかを読み解く一冊。歴史の中に保存された感情を読み解きながら、感情がどのように、その姿を変えていったのかを、読み解いていきます。アケーディア、メランコリア、鬱という似たような症状が、歴史の中で、どのように扱われてきたのか、を紐解きながら、歴史の中で失われた感情を示します。ここでは、語そのものが変わっていくことにより、社会の中での価値が変わりゆくことで、失われる感情を説明します。そして、「名誉」という言葉そのものは変化しないが、失われた感情を見ていきます。18世紀、19世期に考えられた名誉の定義を参照しつつ、現代での名誉の定義との差異を示します。近代社会の歴史の中で、名誉、共感、感情移入といったものが、どのように規定され、どのように社会の中にある共同体に作用してきたのか、また、共同体からの作用を受けてきたのか。歴史の中での人々の振る舞い、言動を参照しながら、その揺れ動きを見ていきます。感情がどのように、ジェンダー化されていったのか。その中で、「共感」というものが、どのように作られ、我々に影響してきたのかを示します。現代を生きる我々が、歴史というものに、どう向き合い、何をしてはいけないのか、といったものが本書から考えられるのではないでしょうか。

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