「生物に世界はどう見えるか」を読んで

農林水産省の行政官として、生物に関わる行政分野を担当した著者による生物の「認識」を主軸に、「その生物にとって、世界はどのように見えているのか」を階層的に見ていく、という内容です。本書の素晴らしいところは、著者の幅広い知識と最新の科学的知見に裏打ちされた、豊かな想像力による「生物の世界」の生々しさです。例えば、ゾウリムシや大腸菌の世界がどんな世界なのか、ということを描いた部分。彼らには、世界は直線的に見えていることだったり、他の生物(=人間)との類似性だったり、生物が階層的に繋がっている事を示します。微生物、植物、カビ・キノコ、ミミズ、昆虫、魚、鳥、哺乳類と、生物界の登場人物が、どのように世界を見えているのか、世界がどう見えているのか、ということを詳細に描いていきます。専門用語もほとんど出てこず、著者のしっかりとした想像力で描かれており、読んでいて、「なるほど」と、その生物の生態の不思議を理解できる、という良書です。

それぞれの生物の認識、そして、その認識がどのように発生しているのか。そこに対する解説は、楽しくもあり、面白くもあり、とても読み応えがありました。「認識」から「意識」に進化していく様子を、徐々に見ていく、という本書の構成も非常に面白かったです。人類とその他の生物との共通性を改めて感じる事ができた、素晴らしい読書体験でした。

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