「応援の人類学」を読んで

国立民族学博物館の丹羽氏の編著によるスポーツ、芸能、アイドルといった場で応援の姿、そこにある応援される人、応援する人の関係をフィールドワークから考察していく一冊です。本書では、応援、という現象の幅を大学野球の応援団、プロスポーツの応援団、芸能、アイドルといった日本での応援の実態から捉え直していきます。私たちのする「応援」という行為が、どのような心の動きを生み出しているのか、「応援」がどのように私たちに影響しているのか。そのことを応援をする人たち、応援団というものが、時代とともにどのように変わっていったのか。時代の変化と、それに対応する応援団の変化を見ながら検討していきます。また、応援する組織としての応援団が、その構成員である応援団とどのような関係を築いているのか。高校野球、大学野球という実例を通して、その関係を描く出していきます。また、スポーツ、芸能の実例を見ながら、応援される人と応援する人の関係を見ていきます。ここでは、スポーツの場で、どのように応援が組織として集団化されていったのか、この集団はどのような関係を応援する人と結んでいるのか、といったことが論じられます。そして、参加型スポーツにおける応援される人、応援する人の複雑な関係を見ることで、日常と非日常という場の動きも描き出されます。芸能から描き出される応援する人の存在によって芸が実現する、という複雑な姿も浮かび上がってきます。本書で、描かれる応援から見えてくるのは、応援という行為を通して、自分という姿が見えてくる、ということです。応援を通して、他者と自分が対比され、自分という存在が確認されます。本書をきっかけとして、応援という現象を新たに考えることができると感じました。

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