「清少納言がみていた宇宙と、わたしたちのみている宇宙は同じなのか?」を読んで

天文学者の池内了氏による「新しい博物学」を紹介する一冊。本書は、「新しい博物学」の実践として、テーマを科学的な知識と物語などの文学を交錯させながら語る、という内容になっています。本書は、タイトルにもある「宇宙」から、「新しい博物学」による語りを展開していきます。天文、物理、生き物、と幅広いテーマを、科学によって分かっている知識、万葉集から明治、大正の文学作品から描き出していきます。「すばる」「れんず」「なんてん」と、星、望遠鏡についての話題は、著者の知識の深さと射程の広さから、縦横無尽に話題が繰り広げられます。「新しい博物学」として、著者が提示するものが、どういうものなのか、ということがよく分かる文章となっています。科学的に語られる内容を、かつての人々は、どのように記して行ったのか。そこには、事実としての語りと、社会の中で、どのように捉えられていたのかという文化の語りが現れます。これらの語りが、科学と混ざって語られる、というのは、人の好奇心を刺激する内容だと思いました。「風土の科学」と通じる、日本の文化と科学の交わる博物学。そして、この博物学が現代に通じている著者の語り。本書は、「新しい博物学」という試みの懐の広さを感じさせる一冊でした。

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