「中世ヨーロッパ」を読んで

中世史研究者のウィンストン・ブラックによる中世ヨーロッパにまつわる11のフィクションについての事実を解説する一冊です。中世は、非常にポジティブに語られることもあれば、ネガティブに語られる時もあります。そこでは、実際の中世とは違う姿が、事実のように語られています。著者は、様々な一次史料をもとに、10歳の中世ヨーロッパの姿を描き出していきます。本書では、中世とは、そもそも、どのような時代なのか、いつ頃を中世というのか、など、基本的な内容から始まり、中世を代表する11のフィクションを、一つずつ、実際はどうだったのか、ということを説明していきます。中世は暗黒時代だったのか、中世の人は地球が平らだと思っていたのか、など、よく事実として語られる内容を、フィクションとして語られるストーリーは、どのようなものか、そのフィクションはどのように広まったのかを様々な資料から解説していきます。そして、事実はどうだったのか、ということを様々な一次史料から提示をしていきます。本書を読むことにより、史料批判、史料に記載されたことは事実なのか、そのことを問い続ける姿勢の重要性が分かってきます。また、一つ一つの事実を語っていく中で、その積み上げがフィクションともなり得る、ということが示されます。本書は、中世ヨーロッパをよく知ることのできる一冊でありながら、史料批判の世界を垣間見ることができる一冊です。

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