「感情史とは何か」を読んで

バーバラ・ローゼンワインとリッカルド・クリスティアーニによる感情史を概観する一冊。歴史の中で、過去に感じられた感情がどう扱われていたのか、その感情がどのように変化していったのか、それがあ現在にどうつながっていくのか。感情を歴史学から考えていく、という感情史を4つの視点から考えていきます。近代科学が、どのように感情を取り扱ってきたのか。まず、科学的な視点から検討を行なっていきます。ダーウィン主義、ジェイムス理論、認知主義、情動理論、社会構築主義など、感情がどのように扱われきたのかを、科学という視点から見ていきます。次に、歴史学が、どのように感情を扱ってきたのかを振り返ります。エモーショノロジー、感情体制、感情の共同体、パフォーマティヴといった歴史学者が、どのように感情を考えてきたのか、というアプローチを紹介します。そして、そのアプローリがどのように実践されるのか、ということをアメリカ独立宣言を解釈する中で検討を行なっていきます。感情というものを考えていく上で重要な鍵となる「身体」に関わる問題を見ていきます。ここでは、歴史学にとどまらず、人文学など、様々なテーマにまたがる問題を、感情史が繋いでいていく景色が見えてきます。「未来」では、現代の我々の社会にある問題に対し、感情史はどのように貢献ができるのか、また、貢献されることが期待されるのか、を述べていきます。感情史は、私たちの生を過去と未来と繋ぎ、複雑な感情とどのように向き合っていくのか、という手段を提供するものである、ということが本書では示されます。

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