「古典と日本人」を読んで

明星大学の前田雅之氏による日本における古典の受容史と現在の状況を概観する一冊です。本書では、「なぜ古典を学ぶのか」という問いに対し、そもそも古典とは何なのか、古典が歴史の中でどのように位置付けられてきたのか、ということを示します。本書は、日本における古典の成立、受容、近代以降の状況といったものを順に見ていきます。「古典」として語られているものは何なのか、古典となるための条件は何なのか、という、一見すると簡単に答えられそうな問いを、著者はこれまでの研究などから、こういう条件が揃えば、古典である、というものを提示します。そして、その条件はどのように成立していったのか、ということを歴史を見ながら検討していきます。このように成立していった古典が、どのように公家、武家などの社会に受容されていったのか、ということを示します。そして、近代に入り、西洋化していく日本において、古典がどのような道を辿ったのか、ということが議論されます。最後に、著者が考える「古典を学ぶ意義」が提示されます。日本における古典の成立、受容の歴史を振り返ることで、日本の歴史において、過去がどのように参照されてきたのか、そして、過去を参照することはどういった意味を持っていたのか、ということが分かってきます。文化というものを考える上でも参考になる部分がある一冊だと感じました。

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