「ムーミンの哲学」を読んで

成蹊大学の瀬戸一夫氏によるムーミンのストーリーを題材とした哲学の入門書。本書では、哲学でこれまでに問われてきた時間論、存在論といった主題を、ムーミンのエピソードから描き出します。哲学における問題設定、解釈の仕方を、ムーミンのエピソードを具体的に取り上げることで、私たちが日常生活の中で見ていない問題を、どのように取り組んでいくのか、ということを示します。本書は入門書として書かれているため、その内容を深くは掘り下げて議論はされません。しかし、西洋哲学がどのような土台を持ち、どのように考えてきたのか、哲学者がどのように問題に向き合ってきたのか、ということが平易な文章で書かれています。そこに、ムーミンのエピソードを組み込むことで、哲学の方法が示されます。ムーミンの世界から、メルヘンという神秘に包まれた世界から、こちらの世界を照らします。本書でテーマとされる哲学の問題を、ムーミンのエピソードから考えることにより、私たちの人生、考え方、現在をどのように引き受けるのか、といった問題が繋がれて描かれます。本書をとっかかりとして、それぞれのテーマをより深く考えていく、ということが求められる一冊だと感じました。

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