「真理の探究」を読んで

幻冬社新書から出版されている「真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話」を読みました。「人生に生きる意味はない」というフレーズから始まる、奥深い対談は読み応えがありました。また、著者の佐々木教授と小栗教授の深い考えは、近代の価値観の中では、当たり前故に見落とされる視点であり、重要なものだと感じました。

本書の構成は、大きく、2部構成となっており、前半では、佐々木教授と小栗教授の対談(トークセッションをまとめた内容)となっています。後半は、佐々木教授の専門分野となっている物理学、超弦理論に関する講義と小栗教授による仏教史の講義となっています。

帯の「人生に生きる意味はない」という言葉が目につき、それはどういう理由から、そうなったのかしら、と興味を持ち、本書を手に取りました。本書の序文に、その心が述べられており、なるほど、と思いました。「宇宙の真ん中に自分がいる、というのは思い込み」から離れるためには、世界を正しく(偏見なく)見る必要があり、その中から、人生に生きる意味はない、という話へ繋がっていきます。

仏教的には、輪廻、という考えから、人間の特別性というものは否定できる(犬や虫なども輪廻の中で人間になったり、人間も、その逆であるため、人間のみをよく別ということは難しい)。かたや、物理学の世界からは、近代の科学的見地(適者生存といった進化理論)より、人間も生き物の一つに過ぎない、ということが分かります。

「世界を正しく見る」ということが、本書では繰り返し述べられています。それは、仏教の世界からの意味と物理学(科学)の世界からの意味で重なる部分があり、それが基軸となり、対談が進みます。この「世界を正しく見る」という視点は、日々を忙しく生きる現代の人々にとっても、大事であり、そこから生きる意味を見つけていくことが肝要である、と思いました。

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