「ケアとは何か」を読んで

現象学者の村上靖彦氏による困難な状況にある人を援助するケアラーのインタビューをもとに、ケアとは何かを論じた一冊。本書では、病や貧困により困難な状況にある人たちの語り、その人たちを援助する援助職の人たちの語りから、著者が学んだ内容をまとめた一冊です。本書は著者が学んだ、人の弱さを肯定し、人の生を支える営みとしてのケアを描き出します。そこには、人は一人では生きていけない、という事実からスタートします。そこから、ケアを成り立たせるキーワードを見ていきます。これらのキーワードは、コミュニケーション、願い、存在の実感、苦境への応答、ピアサポートというものにまとめられます。困難な状況でのコミュニケーションでは、いかにして場を開くのか、ということが語られます。そして、生を肯定する、という願いというものに繋いでいきます。このようにして、「存在」というものを明らかにしていきます。明確な答えの出せない問い、「居る」ということとは何か、不条理な現実と向き合い言葉にすることの大切さを、いくつかのインタビューから示します。そして、孤立する人との関係を繋ぎ直すことの大切さを述べます。困難な状況でピアサポートとして、似た境遇の人と繋がることが重要視されることになった背景などを解説します。本書は、ケアという言葉から、人の社会の在り方を考えさせる一冊です。

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