「読まなければなにもはじまらない」を読んで

木越氏と丸井氏らによる「古典を読む」という行為に関して、様々な観点から問い直す一冊。本書は、「読まなければなにもはじまらない」というメッセージから始まります。そこから何が展開されていくのか、ということから、「読む」ということは、どういうことなのか、といった問いが開かれていきます。文学作品と読み手、古典と語り、著者と語り手といった関係性、そして、読み手の中で文学作品がどのように解釈を広げていくのか、という読むことによって、文学作品がどのように命を与えられるのかが語られます。「読む」というこういうの奥深さ、作者の文章の味わいといった内容から、本書は始まります。次に、古典を読むときに出会うもの、それらをどのように考えるのか、といった読み方が論じられます。本文とはなんなのか、という簡単そうに見えて非常に難しい問題や、表記についての問題といった古典に限らない、「読む」という行為にまつわる問題が、古典において、どのように考えるのかを解説します。また、数々の古典作品を例に、典拠、文体、書簡小説、絵と文章の関係、漢詩、文学の範囲、演劇といったテーマが語られます。そして、「今、古典を読む」とは、どういう意味があるのか、ということが述べられます。そこでは、現代の教育が抱える問題や「役に立つ学問」といった問いが立てられます。これらの内容は、読者自身も古典を通して、考えさせられる内容となっています。最後に、本書の主題「読むことでなにがはじまるのか」という内容を議論する座談会が収められています。ここでは、様々なテーマについて、論者がそれぞれの立場から、率直な意見を提示します。我々は、その中での問いに自分の答えを考えていく必要があるのではないか、と思いました。

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