「精霊に捕まって倒れる」を読んで

作家、エッセイスト、編集者のアン・ファディマンによるモン族の女の子、リア・リーのてんかん発作に対する両親と医療者という異なる文化の衝突を丁寧に聞き取り、何があったのかを掘り起こしていく一冊。本書は、リアの経過に両親をはじめとするモン族の文化がどのように関わっていったのか、西洋医学、アメリカの文化がどのように関わってきたのかを、それぞれの視点から見ていきます。言葉の違い、文化の違いといった両者の違いから発生した衝突。それがどのような事態を引き起こしたのか。そのことをモンの人々との語りや、医師たちからの聞き取りから、詳細にリア・リーの経過を描いていきます。アメリカから見たモン族、モン族から見たアメリカというすれ違い。このすれ違いが、どのようにして生まれたのか。同じものも見方によって変わる、という「ルビンの壺」のように、一見して見えないものを丁寧に解していきます。本書は、異なる文化が出会ったとき、どのように人と人が向き合うのか、ということをさまざまな分野の知識とその実際の場で起きたことを紹介します。異文化と出会ったときに、どのようなアプローチがあるのか、という手がかりを本書は示しています。リア・リーと両親の物語を主軸にしつつ、モン族の辿った歴史、西洋医学が異なる文化と出会ったときにとった態度などの丁寧な描写がされています。分断が大きな問題となっている時代において、本書が問う内容は、ますます重要になっていると思います。

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