「どこからが病気なの?」を読んで

筑摩書房 どこからが病気なの? / 市原 真 著筑摩書房のウェブサイト。新刊案内、書籍検索、各種の連載エッセイ、主催イベントや文学賞の案内。www.chikumashobo.co.jp

「病理医ヤンデル」として有名な市原先生の読みやすい「病気」についての本です。非常に面白い、かつ、役に立つ、と、すごく良い。「読者にとって、何が知りたい、読みたい」という部分と、著者の書きたいことのバランスを、うまくとってまとめられていて、良い内容だな、と思いました。プロローグの「病気と平気の線引きはどこ?」という問いに、「医学的な正しさ」を言っても役に立たないよね(具体的な行動指針にならない)、という自答と、「医療は医学というサイエンスだけじゃなくて、医術という実学も融合されている」という、確かに言われてみればそうだ、という視点を提示は、思考の積み重ねがあってこそ、だな、と思いました。

目線、というところで、医療は「医療シアター」という群像劇だ、という例えも、なるほど、と思いました。患者と医療関係者だけで、医療は完結しているわけじゃなくて、患者の周り(家族だったり、友人だったり、同僚だったり)も関わっていく。だから、自分も、この「医療シアター」の中にいるわけで、患者になるかもしれないし、患者の家族になるかもしれない。その時に勉強するのでは遅いから、今からでも勉強していくのは必要だな、と感じました。

「診断」の話や「病気」の話が、丁寧に述べられており、非常に勉強になるな、と思いました。「病気か、病気ではないか」という判断をするのに、「未来予測」というものがあって、放っておいても治るか、それとも、悪化するのか、というものがあり、診断には「時間」という情報も重要になる、という点は、知っておかないといけないな、と思いました。検査をし、状態を判断するための解像度を上げる、という医師の思考を進めていく上で、「時間の経過で診断の情報を得る」ということも必要になる。いわば、診断は「詰将棋」のようなもの、というのは、確かに、と思いました(診断でなくても、仕事で何かを検査・調査していると、似たような「詰将棋」的な思考になるので、なるほど、と思いました)。

何度か本書でも登場した言葉で、つまり、このことが大事なんだな、という言葉が、とてもしっくりくる言葉でした。

病気とは、「こないだまでの自分がうまく保てなくなること」。
健康とは、「こないだまでの自分をうまく保ち続けていること」。

本書で何度も紹介されていた「Q助」という消防庁が作ったアプリ(Web版もある)は、非常に便利(というか、インストールしていると、役に立つ)と思ったので、ここでも紹介したいと思います。

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