「ビジュアルデザイン論」を読んで

グラフィックデザイナー、デザイン理論家のリカルド・ファルチネッリによる現在のデザインに関する過去から現代までの実例を踏まえ、デザインとは何か、私たちは生産者として、そして、消費者として、どのように向き合っていくのか、ということを論じた一冊です。デザインと芸術がどのように区別されるのか、という曖昧な領域に境界線を引き、そこから議論を開始します。この境界線の曖昧さは、議論の土台であり、決して、確定された境界線ではありません。意図を持って、どのように見られるか、ということのためにデザインされます。意図とはなんなのか。それはデザインを見る人が、どのように意味を与えるのか、ということを解説します。デザインを構成するさまざまな要素が、私たちの世界、社会、因習の中でどのように捉えられるのか、ということを数々の例から示します。デザインはその中で、どのように制作され、どのように受容されていくのかを考える必要があります。デザイナーは、表象、形態だけでなく、それがどのように受容されていくのか、を考える必要があります。そして、消費者は、それがどのようにデザインされたのかを考える必要があります。本書は、現在の社会に溢れるさまざまな物事がどのようなメッセージを私たちに伝えようとしているのか、誰がそのメッセージを発しているのか、ということを考えさせる一冊です。

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