「読書の歴史を問う 書物と読者の近代 改訂増補版」を読んで

早稲田大学の和田敦彦教授による「読書とはどういう行為なのか、読書を問うとはどういうことなのか」を考えていくための実践的な一冊。本書では、読書という行為が、どういったプロセスを持つのかということを提示します。そして、読書という行為を問うことが、どのような重要性を持っているのかを示します。読書という行為は、情報がたどり着き、理解される一連のプロセスであり、それが問われることは情報にアクセスする権利を守ることになる、ということを提示します。読書をプロセスとして捉えた時、それは、本がどのように出版され、流通し、販売されるのか、というプロセスと、読者が本を読み、それを理解していく、というプロセスからなります。本書では、それぞれのプロセスを詳細に見ていくことで、読書を問うことが、どのようなことかを示していきます。本書は書物と読者という関係だけでなく、書物と場所、流通、検閲といった話題やデジタル化といった書物を取り囲む話題も拾いあげます。これらの話題から、読書に関わる問いを具体的に取り上げます。これらの問いをどのように調べていくのか、それをどのように実践していくのか、といったことを解説します。例えば、デジタル化という話題であれば、デジタル化されていない書物という隠れたものに対する知識や、どのようにしてデジタル化する書物が収集されたのか知っていることが、どのように重要になってくるのかを例示します。また、本書では、読者が書物を理解するプロセスも問います。読書という情報を理解していくプロセスが、どのように位置づけられるのか。読み方とそこに働く力はどのような関係なのか。読書という行為が、様々な営みとどのように結びついているのかといったことを考えていく上で、本書は実践的な方法を提供しています。

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