「言葉の森から出られない」を読んで

明治大学の中村教授による様々な視点から言語を語るという内容です。普段目にする言葉から、言葉の成り立ち、語源、結びつきなど、まさに「言葉の森」と表現するのがふさわしい世界が、本書には広がっています。「シャンパーニュをいただくこと」の話は、誤用だけど、この人が言うと、正しいように感じる、というのは、あるなぁ、と納得させられました。「言霊のない言葉」は、自分がこの言葉に感じていた居心地の悪さが、鋭く分析されていて、そうそう、そういうことだよな、と、1人頷きながら読んでいました。どのエピソードも、短いながらも、言葉の広がりであったり、つながりであったり、言葉の面白さ、というものが、散りばめられていて、「言葉の森」を彷徨っているような読書体験でした。言語の面白さ、そして、意外な発見、というものが、日常には隠れている、という言語学的な面白さを感じることができました。

日本語、英語、中国語、印欧語と、様々な言語の話を巡って、語られていく著者の言葉は、なるほどな、という面白さがありました。「「虹」について」での、「虹」を表す言葉は、印欧語では「弓」の複合語、というのは、そう言われることで、確かに、どの言葉でも「弓」という表現はある、という発見の面白さがありました。「エドキアーノ」という新しいイタリア語の表現の中から見える「江戸っ子」という言葉。「枕と相談」というスペインの慣用句。「朝のあいさつ」と、普段使っている言葉の奥行きと広がり、連なりが感じられました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?