「紫式部ひとり語り」を読んで

平安文学、紫式部に詳しい山本氏による「紫式部による独白」という形式で書かれた紫式部伝です。紫式部によって語られる「源氏物語」の誕生秘話や、女房となった理由など、興味深い打ち明け話が、非常に面白い作品です。徹底した文献調査に裏打ちされた内容は、本当に紫式部が現代の言葉で、私たちに分かりやすく、当時の話をしている、と感じさせてくれます。紫式部の人生の中での出会いと別れの物語、その中での数々の思い。平安という世を生きる1人の女性の生き様は、現代の私たちからも共感するところが多いな、と思いました。中宮彰子の女房として不本意ながら出仕せざるをえなくなった時の話。その時の心中、そこから、女房としての役割を自覚するまでの話。そこに関わる様々な出来事や人々。ダイナミクスな物語は、読み応えがあります。苦しい「世」を生きる「身」はつらい。それでも、人は生きていく。紫式部の至る境地は、紫式部の人生を、紫式部の言葉で語られることで、より深く、感じ入る世界でした。

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