「病いと癒しの人間史」を読んで

感染免疫学、ワクチン学を専門とする岡田さんによる感染症と人間との関わりの歴史をヨーロッパの風景と絡めながら語る、というのが本書の内容です。病気は完治する、治るというものではなく、癒すものである、というこれまでの人間の歴史での病気の姿。その中での人は、どのように病と向かい合ってきたのか、ペスト、スペイン・インフルエンザ、コレラ、エボラなどの感染症と人間との闘いを様々な視点から見ていきます。著者がヨーロッパを訪れ、その土地の過去を紐解き、著者自身が感じたこと、思ったことを語っていきます。そこには、著者自身の実体験からの考えがあり、ただ歴史を語るだけではない、現在を生きる我々が、どう病気と向かい合っていくのか、ということを考えさせられます。

「病い」を見つめる目は、著者が見た風景だけでなく、与謝野晶子、樋口一葉など、日本の作家の作品や生涯と病いが、どう関係していたのか、という点から、日本人はどのように病いと生きていたのか、という語りは、暗さと明るさの共存する、人間の強さを感じる内容でした。

今の時代だからこそ、人間は、どのように病いと向き合うのか、それを考えるきっかけにもなる本でした。

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