「ピジン・クレオル諸語の世界」を読んで

言語学・文化人類学者の西江氏によるピジン語、クレオル語といった「ことば」がである場で起こることを考えていく一冊です。異なる「ことば」が出会う場で、人の集団同士が交流する場で、どのように「ことば」が生まれてくるのか、ということを考えていきます。「ことば」を考えていく上で、「言語」とは何なのか、人々のコミュニケーションとはどういうものなのか、ということを何度も考察していきます。「動物になりたかった少年時代」、異なる「ことば」が出会う場としての原体験、「パンパン・ガール」と呼ばれた女性たちの言葉。「ことば」「言語」とは、どういうもなのか、を、ピジン語、クレオル語と呼ばれる言語を基に考えていきます。「異なる言語」とは、どういうことを意味しているのか。そもそも、「言語」の名称とは、ということを考えます。それらの考察から、異言語が出会ったとき、そこでピジン語化という過程が、どのように進行していくのか、ということを、世界各地の言葉を実例に考えていきます。その後、環境が変化していくことで、ピジン語化した言葉が消滅せずに、母語ととなっていく、クレオル語化していく、という事例を見ていきます。この「ことば」が連続的に変化していく過程を、様々な場合、分岐を考えていきます。ここには、「ことば」が、それ単体であるのではなく、人、環境との相互に関係していく動きが描かれています。この「ことば」を考えていく上での著者の視点の広さ、高さを感じられる一冊です。

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