「芭蕉のあそび」を読んで

国文学者の深沢眞二氏による松尾芭蕉の俳諧を読み解き、そこにこめられた「あそび」を見ていく一冊。本書は、初めに「俳諧」を歴史の流れとともに、「俳諧とは何か」ということを概観していきます。そして「俳諧」とは、笑いの文学である、という文学史を見ていきます。そして、「芭蕉へ帰れ」というキャッチコピーで芭蕉の俳諧における「あそび」を見ていきます。芭蕉の俳諧に見る「しゃれ」「パロディ」「もじり」「なりきり」「なぞ」という要素を読み解いていきます。芭蕉の発句が成立した時、そして、芭蕉がどういう古典文学を踏まえていたのか、また、当時の人々の中で、その言葉がどういったふうに扱われていたのか、ということを当時の資料などを参照しながら見ていきます。江戸時代になり出版が広がり、古典が読まれるようなったという背景から、それらの古典で描かれた言葉が俳諧でどう読まれているのか、という読み解きであったり、謡曲を踏まえた文句取りの俳諧といったものが解説されます。そこには、芭蕉を通すことで、ニヤリとさせられるような要素が出てきます。連想からさまざまな事柄が繋がり、なるほどなぁ、と思わされます。本書は、芭蕉をはじめとする古典を読む上で、当時の文化基盤、共有されていた知識や文化を知ることの重要性を教えてくれる一冊です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?