「文化人類学の思考法」を読んで

「世界を考える道具」の詰まった「考えるために役立つ道具箱」が本書です。本書では、様々な「問い」に対して、文化人類学が、どのようなアプローチをしてきたのか、その答えにたどりつくための探索、そのようなものが紹介されています。3部構成で、世界をどのように捉えるのか、価値と秩序とはどういうものなのか、共同性とは何か、といったものを見ながら、考えていきます。本書は、「答え」を考えるために、文化人類学者は何を考えてきたのか、何を観察してきたのか、そのような内容を丁寧に述べていきます。

本書で紹介されるものは、「当たり前と考えているものは、本当に当たり前なの?」という疑問、そして、その疑問から始まる「当たり前を疑う」という筋道を立てた思考方法です。例えば、呪術と科学の間にある差異はなんなのか?という問いは、呪術と科学の間にある共通点はなんなのか?という問いでもある、ということであります。そこから、どのような筋道や体系を使って、この問いの答えを探求するのか、ということが、本書の重要なところです。自分たちが当たり前に思っていることが、どのくらい当たり前ではないのか、ということが暴かれていくところは、爽快感すら感じるほどに、思考が転回していく読書体験でした。

本書は、一家に一冊あると良い「思考の道具箱」となるでしょう。

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