「読み書きの日本史」を読んで

東北大学の八鍬教授による「読み書き」を中心とした日本の歴史、その変遷を解説した一冊です。本書では、現代において当たり前に捉えられている「誰でも読み書きができる」という状況に対して、どういった歴史が連なっているのか、ということを解説します。読み書きされる対象である「日本語の文字」がどのように成立していったのか、という中国からの文字の流入。そして、日本での書き言葉が、どのような変遷を辿っていったのか、という文字の歴史。書かれた文字を、どのようにして、当時の人々が読み書きできるように学んでいったのか、という学習の歴史。往来物と呼ばれる、人々が文字の学習に使用していた書籍の流れも語られます。日本の歴史において、往来物と呼ばれる書籍がどのように学習の役割を果たしていったのかが、その起源や変遷を、様々な研究を基に語られます。近世、そして、明治以降における読み書きの学習というものについて、様々なデータを示し、より具体的な実像が、本書から浮かび上がってきます。本書は、日本の識字率といった、広く知られている内容に対して、より明確な実態を示しながら、私たちのこれからの「文字社会」について考えさせる一冊だと思いました。

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