「音楽の哲学入門」を読んで

哲学者のセオドア・グレイシックによる音楽の本質と価値について考察した一冊。クラシック音楽、ジャズ、ポピュラー音楽など、さまざまなジャンル音楽の例や、ショーペンハウアーの議論など、多岐にわたる例と議論を踏まえ、音楽というものについて語られます。音楽とは何なのか、音楽を聴くこと、音楽と情動、音楽がもたらす経験の核心は何なのか、といったテーマが議論されます。本書では、音楽と音楽的なものの違いなど、一見、自明に考えられるところから話を進めていきます。音楽が芸術である、ということが、どういう意味を持つのか。音楽を聴く、という行為は、どのようにして可能になるのか。音楽がどのようにして情動を表出しているのか。音楽の感じさせる崇高さとは何なのか。これらの議論をさまざまな伝統的な考えや、これまでの議論を参考に考察されます。音楽の持つスタイルに関して、そのスタイルが文化とどのようにかかるのか、という議論。また、音楽が聴かれる時、その音楽をどのようにして語るのか。音楽の周辺が、どのように音楽に影響を与えるのかといったことも語られます。本書は、タイトルにあるように入門的な内容だと思いますが、本書を入り口により深い議論に進んでいけるのではないかと感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?