「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」を読んで

臨床心理士の東畑開人氏による「この自由で過酷な社会を、「いかに生きるか」」を考える一冊です。本書では、現代社会において孤立している私たちに共通したものが何なのか。個人のそれぞれの苦悩が、自分の苦悩でもあるのではないか。現代の社会を、どのように生きていくのか。その問いを考えていくことから、本書は始まります。本書では、私たちの心、人生といったものを補助線を引きながら、考えていきます。現代の社会では、複雑なものをシンプルにし、理解をしていくことで、私たちは生きています。本書では、複雑なものを複雑なままに理解する、ということを述べます。複雑さを抱えたままに生きていく、そのために、どういった補助線で他者と繋がるのか。他者と私の関係を問いかけてきます。不完全な私たちが一緒に生きていく、その関係の結び方を考えます。傷つけること、傷つけられること。心を守る、ということを、色々な面から考えていきます。生きるということの複雑さについて、正面から考えていきます。自分が他者にどう依存するのか、どう依存されるのか、ということを傷つきの物語と共に、考えます。この物語の持つ力を、物語られる中で、どういう面があるのか、と問いかけてきます。そして、幸福とは何かを問いかけてきます。私たちが良いと考えるもの、悪いと考えるものに別な角度から光を当てることで、それだけではない面を浮かび上がらせていきます。本書は、物事をシンプルにしていこうとする社会の中で、自分の中にある複数の声を、その複雑さをそのままに受け止めることの重要性を提示します。そのようにして生きること、考えるための補助線を引いていくこと。考え続けていくこと、その大切さを本書は教えてくれます。

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