「わたしが人間であるために」を読んで

障害者運動・自立生活運動の世界的リーダーとして知られるジュディス・ヒューマンと社会起業家・文筆家のクリステン・ジョイナーによる「ジュディス・ヒューマン」の半生を描いた一冊です。本書では、ジュディス・ヒューマンの生い立ちから社会に出るところを描く第一部、リハビリテーション法504条項施行を巡る闘いを描く第二部、クリントン、オバマ政権、世界銀行での障害者の権利に対する闘いを描く第三部から構成されています。ジュディス・ヒューマンが語るように、本書は、同じ目的のために闘った「私たち」の物語です。生い立ちを語る第一部では、社会がどのように彼女を扱ってきたのか、それがいかに彼女を傷つけているのかが克明に描かれます。ここには、見えない存在として扱われる、ということが何を意味するのかが問われています。公平とは何なのか、それが問われています。そして、闘うことの意味、仲間の存在の重要性が語られます。ジュディス・ヒューマンの闘いが何をもたらしたのか、そして、どうなったのかが第二部へと続いていきます。「私たち」がどのように集まり、どのように闘ったのか。リハビリテーション法504条項施行を巡る闘いは、その場にいた当事者の記憶として、克明に描かれます。闘うことの意義、声を上げ続けることが、なぜ大事なのかが語られます。その後のジュディス・ヒューマンのクリントン、オバマ政権、世界銀行での闘いを通して、公平な社会をどのように作っていくのか、社会に変化を起こしていくのか、そのことがなぜ大事なのかを、著者は強く語りかけてきます。本書は分断が強調される現代において、公平な社会、人間らしく生きられる社会を望む全ての人が読む一冊だと思いました。

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