「囚われし者たちの国」を読んで

ジョン・ジェイ・カレッジのバズ・ドライシンガー教授が世界の刑務所を訪ねて司法制度、刑務所のあり方を問い直すという一冊です。アメリカの司法、刑務所が抱える様々な問題(犯罪件数の増加、刑務所数の増加、再犯率の高さ、など)を考えていくうちに、司法制度、刑務所とはどうあるべきなのか、という疑問が著者に出ていきます。我々が考える「犯罪を犯せば、刑務所に行き、罪を償う」という姿を問い直すために、9カ国の刑務所を訪ね、その国での司法のあり方、刑務所のあり方を考えます。ルワンダ、南アフリカ、ウガンダ、ジャマイカ、タイ、ブラジル、オーストラリア、シンガポール、ノルウェーと、修復的司法、教育プログラム、受刑者向けセラピー、独房監禁の恐ろしさ、民間刑務所、社会復帰、開放的な刑務所と、その姿を見ていきます。本書には、著者が体験した出来事や、著者が出会った人々の生々しさが丁寧に描かれています。そのために、著者を通して、改革へ向かう希望、司法制度、刑務所における圧倒的な絶望が、本から伝わってきます。現状よりも「よりよいやり方」を探すことの中に正義がある。正義とは、ひとつの運動である。歩みを止めないことが重要なんだ。そして、その原動力になるのが希望なのだ。本書を締め括る著者の言葉は、本書を通して、著者と旅をすることで、読者に託された希望になるのだと思いました。

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