「生きるためのフェミニズム」を読んで

堅田香緒里氏による現代の社会にある格差、貧困、分断の問題をフェミニズムの観点から考えていく一冊。ジェンダー、階級、人種、民族、セクシャリティ、障害など、様々な要因から差別や暴力を生み出す社会、それらに対する抵抗。これらのことを、フェミニズムの観点から、社会の中にどのような動きがあったのかをみながら考えていきます。「パンとバラのストライキ」から始まり、資本主義的秩序を乱す「魔女」。COVID-19により晒されたグローバル資本主義、ネオリベラリズムという災厄。ここで提示される危機は、目前にあって、見えない人には見えない、という危機です。著者は、この危機についてのことを、自身の体験を通して語ります。自身の中にある差別意識、特権性に向き合うこと。そして、そのことを問い続けていくこと。本書が書き上げられるまでの著者の戸惑い、そこから自身の特権性との向き合い方、覚悟の決め方のようなものが見えていきます。ジェントリフィケーションの流れを実例を通してみながら、著者は、そこでの抵抗というものを見ていきます。ジェントリフィケーションの暴力に対する抵抗、それを支える交差性を著者は指摘します。差別を単純化することが誤りである、ということを交差性は明らかにします。そして、著者は「より安全な空間」をどのように作っていくのか、ということを考えます。そこでは、他者の特権性、として、自分の特権性を問い続けていくことが要求されます。

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