はにかみのつもりがニヤニヤ
はにかみのつもりがニヤニヤ
100m走。
屈伸しておいてコースに立つ。
これから始まるという高揚感や不安で固まった空気。
グラウンドの白線の間に立っているだけなのに、クラスメイトの歓声から分離しているような空気。
意識が既に走り終わっている。
パンッ!
ゾワゾワと血流が急なゲリラ豪雨で増水した河川のようにゴウゴウと音を立てて、一歩目の地面の感触と体に跳ね返る衝撃を煙と共に世界から切り取る。
電気自動車みたいに自分のエンジン音も、隣の息遣いも聞こえない。
ジリジリと詰め寄り、そして前が開ける。
自分だけなんだという景色になる。
スタート地点に置いてきた自分を拾い上げながら、全身で呼吸しながら疲労感を吐き出す。
よっしゃ。
「約束覚えてるよね?○□くん」
ニヤニヤ。
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