ニュータウンを歩き、オールドタウン化するようすに少子高齢化を実感する
車を運転するのがあまり好きではありませんので、訪問するにもできるだけ電車移動を選んでいます。車で目的地まで直行するよりも、街の中を歩いていると、気付くことがあります。
高台を造成して、静かで見晴らしの良い住宅街があります。かつてはニュータウンとして賑わっていたところでしょうが、空き家が目立ってきています。坂道が多く、シニアのみなさんが徒歩や自転車で移動するにも苦労されていることでしょう。そのような場所が日に日に、オールドタウンとなっていくことは、避けられないでしょうし、各地で活性化に挑戦しているとも聞きます。
わが国の少子高齢化や人口減少の影響は、予想を上回るほど大きく、まったく先行きが見通すことができません。コロナ禍を経て、不動産の需要にも影響が出ているせいか、新築住宅の販売や土地の売買が減っている実感があり、不動産登記の依頼が芳しくありません。
人が減ってくれば、不動産は余ります。需給関係から当たり前のことです。需要のある地域は偏っており、人気のあるところは価格上昇し、不人気なところでは成約しません。売る方も買う方も、早いもの勝ちであり、いらない不動産についてはババ抜きのようです。そのままでは使いみちや価値のない土地でも、うまく権利調整をおこない、売れる土地に変えたり、価値のある土地に変化させる能力が求められていると思います。
さて、相続した不要な土地を国が引き取る相続土地国庫帰属制度が開始しました。いらない土地をお金を払って国に引き取ってもらう仕組みです。粗大ごみと同じように、不動産もいよいよお金を払って処分してもらう時代になりました。
しかし、この相続土地国庫帰属制度は、いまのところ、引き取りの対象となる土地の条件が限りなく狭いため、みなさんが期待しているような役割は果たせないでしょう。正直な感想として、国が示している条件を満たす土地であれば、一般に売買で流通させられる土地であると考えます。今後、国民の声が大きくなれば、改善されていくかもしれません。
一方で、空き家を放置することが許されない状況になっています。しだいに、締め付けも厳しくなってまいります。持ち家に住んでいる方も、これから住宅購入を検討している方も、やむなく、出口を考えなければなりません。実家の相続や空き家の利活用へ、専門家が知恵を出して積極的な提案をしていくことが求められます。
それでも、少子高齢化の速さには追いつけないでしょう。ここからは、ほとんどの業界で撤退戦をしのぐことを余儀なくされます。オールドタウンになるどころか、オールドジャパン、オールドカントリーになってしまわないように、縮小していく国にあっても産業の進歩発展は願うものです。