{読書感想短歌*92}市川哲也 『密室館殺人事件 名探偵の証明』
あいする も にくむ も たやすくすべり出す 受け入れる?逃げる?ひっくり返す?
aisuru mo nikumu mo tayasuku suberidasu ukeireru? nigeru? hikkurikaesu?
「名探偵の証明」の続編。〈名探偵がいるから事件が起きる〉という、本末が転倒した主張が、ある程度の「理」として通用している世界での物語(だと、私は解釈している)なので、解決が遅れると探偵が罵られたりして、読んでるとこころがいたい。今回から主役が若き女子にスイッチしたので(※前回はおじさま探偵)、痛々しさもひとしおなのだけど、そんな世界で〈名探偵〉という業に真正面から立ち向かおうとする蜜柑花子がまことにけなげ。無理しすぎない程度に、がんばってほしい。
※なんらかの強い感情って、はじまりはすごくかんたんというか、勘違いだったり、自己欺瞞だったり八つ当たりだったりってことがうすうすわかってる場合も多いのに、こじらせちゃって長びかせちゃうと、〈引くに引けない〉気がしてきちゃって、終わらせるのはすっごく難しい…傾向があるのではないかと、おもう。