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{読書感想短歌*91}津村記久子 『エヴリシング・フロウズ』

なにものかになりたくて空を見上げてた 十四の僕は もう〈僕〉だった

nanimonokani naritakute sorawo miageteta juusino bokuwa mou “boku" datta

津村記久子さん初読み。いい。すっごくいい。中3の男の子の、春から翌春まで。この主人公がね、いわゆるスペック的にはわりとふつうの子で、自分でもふつうと思ってるフシがあって、かつその立ち位置が気に入ってる風でもある。むしろまわりの友達に、一芸に秀でてる子らがいたりするんだけども、でも。でもだよ。読んでくと、いや、君は主人公だわ、自分で気づいてないだけですっごく主人公の器だわ、っておもう。そしてたぶん本人はそれに気づかないまま、ふつうに高校生になってく。自分が主人公だなんて思いもしないで。それが、なんか、すごくいい。

※短歌は、その主人公というよりは、同じとしごろだったころの自分をおもいだして。中学生くらいのころのわたしは、今よりずいぶん賢かったようにおもう。知識は今のほうがあるけど、なんていうか、世界に対して真摯だったよね。そのころと、〈いや、だけど、地続きで自分じゃん〉ということを、だいじにしてゆきたいとおもう。

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