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学びあいサークル第4回 かなこさん

学びあいサークル 地域を歩く、話す、つながる(下記※1)   
  
 機関誌『開発教育』71号の「学びあいフォーラム実践報告」の中で、サークルについても紹介しました。字数の都合で詳しく語ることができなかった内容(「サークルの活動~地域の写真を読み解く」について/サークルメンバー5名への個別インタビュー)を6回に分けてNOTEでお届けします。

第1回「サークルの活動~地域の写真を読み解く」はこちら     
第2回「瞳さん」はこちら     
第3回「ゆうこさん」はこちら     

 第4回はサークルメンバーのかなこさんへのインタビューです。サークル参加の間にどんどん活動が広がっていったかなこさん。提案してくれたテーマ回や、その後の活動についてお聞きしました。

―(学びあいサークルが始まって)2年目の終わりに、(みんなで)今後やってみたいことのアイデア出しをしました。その際にかなこさんが質問形式の読書会を提案してくれて、2回実施しましたね。アイデアはどこから?どんな思いで提案したのですか?

かなこ:DEARのソーシャルアクションクラス(以下、SA)に参加した時に対話チームにいたんです。その中で、メンバーが紹介してくれたのが質問形式の読書会でした。本をみんなが読んでこなくてもいいし、読んでいなくても話ができるので、サークルでもやってみたらどうかと思いました。本を切り口に話が広がったらいいと思ったんです。

―SAクラスでやったことがあったんですね?

かなこ:3~4人でやりました。1人ずつ本を持ってきて、持ってきた人が紹介して他の人が質問するというパターンで順番に質問していきました。

―SAクラスとの違いもあったと思うのですが、サークルでやってみてどうでしたか?

かなこ:SAでは自己理解、自分の掘り下げを並行してやっていました。自分の関心事、ルーツに繋がるような本を持ち寄りましたね。なので心の中を深めていくような話になりました。サークルでは、テーマが「地域」。全然方向性は違っていて、それはそれですごく面白かったです。関りのある地域、身近な地域、地域の抱えている問題とか。Eさんは地域の社会運動の報告書を持ってきてくれて、そこからまちづくりや文教都市の話をしたりしました。ある街の話が、自分の街もそうだった、とつながっていきました。その人の地域の話をしているのに、自分の地域とつながったことを覚えています。
 Aさんがこれから引っ越す地域のことを知りたいからと、ある地域の本を選んでいて。目次の紹介から、こんな視点があるのかと新たな視点を得られました。地域を見る目の新たな視点。色んなめがねがいっぱい見つかったんです。面白かったですね。

―地域を見るめがね。このめがねをかけたら文教都市、別のめがねは別の見方ができるということですか?自分の地域と見比べて気づきはありましたか?

かなこ:新たな視点が見つかりました。書籍というのも大きかったと思います。本の持つ力ですね。ネット情報とは異なる深みがある、もっと深められそうな入り口になるもの。本を手に取ることの面白さを味わえました。

―最初の2年は写真をメインに話し合いをしました。読書会は、写真を使わずに「本」を使った。写真は同じ画像を見ているけれど、媒体が本に代わって、本は自分の中の見方がそれぞれあるのかもしれませんね。

かなこ:本を書くにはしっかり調査をしますよね。ぱっとした印象だけで言っていることとは違うことが見つかる気がしました。とはいえ全然本を読めていないのですが…。本は深いです。

―写真は撮影したサークルメンバーの視点で、本は著者、すなわちサークルメンバーとは別の人の視点ですね。調べて書かれたものなので、事実に加えて著者の視点が入ってくる。読書会は写真のワークとは全く異なるアプローチになり、さらなる見え方の深まりになりました。

かなこ:読書会で色々な本が紹介されました。地域づくりやまちづくり。自分は土地の作物の本を紹介しました。

―地域の作物から地域を見るというのもありですよね。作物・食生活には、風土、地域の人たちが育ててきた何かがあります。うちの近くは、蓮根。川の流域の沼地だったからです。江戸時代に干拓で田んぼに代わって、その米はHさんが住む、別の地域の酒蔵とつながっていました。

かなこ:作物から伝統野菜の話にもつながりました。色んなテーマがいっぱい見つかるなと思いました。

―写真を見たり、本を見たり、動画を見たり。サークルでは色々なことをしましたね。あらためて、おもしろかったな、と思います。

―かなこさんにとって、学びあいサークルはどんな場でしたか?

かなこ:あらためて最近考えたことなんですけど、「日々の生活の中で小さな気づきを持ち寄れる場」でした。糸でつながって自分の場所に持って帰れる場。持ち寄って、持って帰る場です。

―持ち寄るものと持って帰るものは違っていましたか?

かなこ:違っていました。栄養になるものもあれば、自分の地域でもやってみようかなと思えるものもありました。地域について考えていた時間があったから、今地域の活動に参加できている気がします。今は子ども食堂の居場所ボランティアをしています。皿洗いとか、小中学生の居場所スタッフを週2回しているんです。その地域の住民ではありませんが、居場所に出入りしている人になっているので、地域の人みたいなんですよね。1年半前から駄菓子屋もやっていて、「店長」というあだ名で呼ばれるようになりました。実際の店長ではないのですが、子どもたちに「あ、店長〜」とか、名前で呼ばれることで、地域に私の居場所ができてきたかもと感じているんです。金曜は仕事の後にボランティアに行くのですが、晩ご飯を食べている子供たちが「やっほー」って声をかけてくれて、「やっほー」って返す。そういうつながりができてきたなあと思って。学びあいサークルで、地域とつながっている人たちの話を聞いて、刺激になったんじゃないかと思いますよ。

駄菓子屋さん
居場所の子と作った折り紙

―無理やり話を学びあいサークルのおかげです、という方向に持ってきているわけではなく?(笑)関わりは元々持っていましたよね?

かなこ:関わりはありましたが、コンスタントではなかったんです。学びあいがあったから…だと作り話になってしまうかもしれませんが、色々な要素が重なったうちの1つが学びあいサークルだと思います。

―何かを持ち寄り、みんなで話をして、持って帰るものが栄養になったという話。私自身もそうかもしれないと思います。サークルの宿題をなんとか用意して持って行って、みんなの話によってすばらしいものに成長していった。他の人の話から、栄養たっぷりになりました。

かなこ:私自身は聞いているばかりでしたが、そう思います。国際情勢や政治のこともたくさん話ができました。そういう話ができる場が他にはないんです。そういう話題も持ち寄ってみんなで話をして、それから帰ってニュースを見たりして、あのことか、となる。話せる場があるのが大事なことなんだなと思います。モヤモヤとしたこと、疑問やひっかかり、素朴な気持ちをアウトプットできるから。そういうのをできる場がないと、モヤモヤはモヤモヤのまま、成長もしない。人と話すってすごい大事だなと思いました。SAで対話について取り組んできましたが、あらためて大事だなと。サークルはすごくいい場でした。

―SAとサークルとの違いはありますか?

かなこ:SAは本(※『ソーシャルアクションハンドブック』)もできたし、修了式もあったので、完結したものというイメージがあります。区切りがついたものですね。SAの対話チームのメンバーで、終了後もしばらく活動をしました。それもいつしか途切れてしまって。SAはアクションを何かしようという場。学びあいサークルで、何か企画がないですかと言われた時に、アイデアをふりしぼって、SAでの経験をいかすことができました。SAで得た対話のメソッドがあり、サークルでアクションしたんです。サークルに参加することもアクションなんですよね。他の人の企画に乗るばかりではなく、自分からの提案を実行した、やってみようと思えるきっかけになりました。ステップアップみたいな感じですね。

―サークルの他のメンバーの話とも重なるお話でした。見方とかつながりとか、自分自身にも返ってくるものがありました。同じポイントで感じていたのかなと。お話、どうもありがとうございました。

 サークルの前に参加していた場での学びをサークルで実践、アクションすることができたというかなこさん。地域の居場所で「店長」として親しまれるなど、確実に地域でのアクションも広がってきています。サークルが背中を押してくれたとのお話、嬉しく思いました。かなこさんの居場所のお話、実はもっと興味深い話も色々とあって、もっと深掘りしたいのでサークルで話してもらうことになりました。楽しみです。

第5回「あきこさん」はこちら
第6回「Aさん」はこちら

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学びあいサークルとは?
 学びあいフォーラムを通して各地域の団体と関わってきたけれど、自分の地域とはあまり関わっていない、という思いを持つコーディネーター3人が企画し、2021年からサークル活動を開始した。サークルでは、メンバーが自分の地域を歩き、気づきや発見を共有し、地域とつながることを目的とした。サイトを見てDEARを知った人を含む5名が参加し、コーディネーターを入れた8名(地域は東京3、大阪3、兵庫1、ドイツ1)で、オンラインで活動を開始した。メンバーは毎回、地域を歩き、視点を持って撮ってきた写真を共有し、写真を読み解きながら学びあい、次は地域の人と話してさらに深めた結果を持ち寄る、という過程を繰り返した。互いに知らない地域についてであったが歴史、社会、地域のつながりが掘り起こされていった。次年度にはリアルで会うオフ会やテーマごとの回に発展するなど、内容とつながりが深まっていった。

(サークルコーディネーター:大野のどか、佐藤友紀、中村絵乃)


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