開発教育ファシリテーション講座2024 セッション2「感情や枠組みに気づき、ありのままの相手を聴いてみよう」セッション3「開発問題に合意形成は欠かせない!」 セッション4「交流を通して、つながりを深めよう」2024.5.18(土) @国際青少年センターYMCA東山荘
こんにちは!インターンのぱるです。ついに迎えた2日間の合宿。今回は、1日目の内容に焦点を当てて紹介していきます。
合宿は、静岡県の御殿場にあるYMCAさんの東山荘をお借りして開催されました。会場到着まで、ご近所さん同士で協力しながら、バスの遅れなどあったものの、無事参加者全員で合流することが出来ました!5月半ばではあるものの、夏の訪れを感じながらの2日間になりました。そして何より、富士山がとても綺麗に見えて、私含めみんなで見入ってしまうほどでした…!
セッションについては、1日目にセッション2~4、2日目にセッション5をカバーしました。今回は1日目のセッション2、セッション3、セッション4について紹介します。
セッション2「感情や枠組みに気づき、ありのままの相手を聴いてみよう」
セッション2は、「感情や枠組みに気づき、ありのままの相手を聴いてみよう」。担当はまりさんとえのっちさんでした。
セッション2は、以下の流れで進んでいきました。
もくじ
1.はじめに
2.今の気持ち&自己紹介
3.約束づくり
4.私の気持ち・相手の気持ち
5.聴く練習×3
6.解説
7.ふりかえり
1.はじめに
最初に、前回のセッション1で学んだ内容について改めて整理するとともに、皆さんがどのような学びを得たのかについてもシェアしました。セッション1のテーマは「私と開発教育とファシリテーション」でしたが、ファシリテーターのもつ恐怖や、「役割」というよりもむしろ「人間的な」関わりを受け入れる重要性を思い出しました。
また、皆さんの学びの中からは、例えば以下のような点が挙げられました。
・ファシリテーターのもつ恐怖は「人間的な関わり」から来ている
・ファシリテーターとしての何か決まった型を探そうとしていたが、そうではなく、自分なりにどのようなかかわり方から人の将来の可能性を拡げられるようなファシリテーションを行っていくのか考えたい
・途上国の問題や開発の問題、ひいては開発教育に興味を持ったのも、私自身が、遠い途上国の問題を自分とのつながりを認知したうえで感情が動かされたからだと思い出すことが出来た
そのうえで、セッション2のテーマは「気持ち」や「聴く」ことであり、ファシリテーションの基礎である相手を聴く姿勢や、自分の気持ちや枠組みに気づいて認めることを目指していくことが共有されました。
2.今の気持ち&自己紹介
次に、自己紹介も兼ねて、今の気持ちを共有するワークを行いました。床に置いてある様々な色の色紙の中から、今の自分の気持ちに一番近い色を選んで、その後2重の円になって向かい合って座って紹介し合うというものです。これを5回行いました。
合宿初のワークでしたが、少しずつ心身ともに緊張がほぐれてきた様子の中、同じ気持ちでも違う色を選んでいることがあったり、逆に同じ色を選んでいても違う気持ちを持っていることがあることが分かりました。
3.約束づくり
このパートでは、2日間みんなで安心して参加することが出来るように、約束を作りました。初めに、以下の3つの約束が共有されました。これらの約束は、DEARの他の活動にも通じる部分が多いです。
そして、参加者の皆さんのアイデアから、以下のようなルールが追加されました。
・表情豊かに
・周りを気にせず言ってみる(遠慮しない)
・素直に表現する
・自分のペースを大事に!
・自分も相手も気持ちを大切にしよう
・不安がらずに何でもしゃべろう
・まとまってなくても大丈夫!
みんなで話し合いながら追加されたルールを頭に留めながら、いよいよ本格的なワーク開始です。
4.私の気持ち・相手の気持ち
次に、いよいよセッション2の大きなテーマの一つである「気持ち」に直結するワーク、「気持ちビンゴ」を行いました。
このワークを通じて自分や相手の気持ちに向き合う中で、様々な学びがありました。
・日々感じている気持ちに、良いものも悪いものもない
・自分の気持ちは日々流れていきなかなか向き合う機会がないが、自分の気持ちに対する気付きを広げて受け止めていくことで、他者の気持ちにもより気づくことが出来るようになり、他者を理解する可能性につながる
・自分の気持ちを閉じてしまうことは、自分の中に閉じこもり孤立することにつながる
・気持ちの背景には、価値観や行動のきっかけが隠れている
→「なぜ」そう感じたのか?「なぜ」そこに関心を持つのか?「なぜ」そのような行動をするのか? を考えよう
私自身、日々の忙しさの中で、なかなか自分の気持ちに向き合う機会は少なかったように感じます。だからこそ、今一度自分自身の気持ちに素直に向き合うこと、またそれを通じて他者の気持ちに向き合うことにもなることを学びました。
5.聴く練習×3
このパートでは、3種類の「聴く練習」となるワークを行いました。順番に概要を紹介していきます。
①ペアワーク
1回目はペアワークで、「相手の話に関心を持って全身で聴くこと」「相手の気持ちや思いを受け止めること」を心掛けていきました。
なお、1回目のワークでは、シチュエーションとして「日常の中で起こりがちな状況」として、聴く人に対して手を振ってくる人がいるという邪魔が入りました!確かに、会話の最中に聴き手側の知り合いに遭遇する、というシチュエーションはあるあるですよね。このワークは2分で、ワークが終わったら話し手と聴き手を交換し、再度聴く側に邪魔が入る形でした。
この2回のワークを通して、私は「傾聴の難しさと重要さ」について実感しました。1回目の邪魔が入ったワークでは、自分の話を相手が本当に聞いてくれているのか、という不安を少し感じましたが、2回目のワークで自分の話を1から10まで聴いてもらったときは、1回目にはなかった安心感がありました。また、それと同時に、日常においても誰かの話を聴くときの自分の姿勢はどのようなものだったか、内省する機会にもなりました。日常において、常に傾聴をし続けることはなかなか難しいものです。だからこそ、あえてお互い聴き合う関係や場づくりを行うこと、また聴いてもらえない時にどう感じるかを理解することの大切さを学びました。
②パラフレーズの練習
続くワークでは、4人組になってパラフレーズの練習を行いました。話すテーマは「先ほどのペアワークで気づいたこと」です。グループの中で話す順番とパラフレーズする人の順番を決め、全員がパラフレーズを行うようにしました。
ここで学んだことは、パラフレーズとは、相手の枠組みで話を理解しようとすることであり、また自分の中で無意識に持っている枠組みに気づくことを可能とするものなのだということです。誰しも、「~であるべき」「~とはこういうものだ」という枠組みは多かれ少なかれ持っていますが、その枠組みに自分で気づいたら、それをいったん外したうえで、他者をありのままに理解することが、難しいけれども大切なのだと知りました。
③傾聴三者リスニング
最後の3回目のワークでは、3人組でグループを作り、話し手、聴き手、観察役を全員が行いました。話すテーマは「ファシリテーション(コミュニケーション)を行う上で、難しいと思うこと、苦手だと感じること」です。
私は、このワークで自分が話し手だった時、パラフレーズしてもらうことで自分の意見が整理されていき、また自分の中で当初は考えていなかったはなしたいことがどんどん湧き出てくるような感覚を覚えています。パラフレーズをされることで間接的かつ客観的に自分の話を改めて理解することが可能になったのだと思います。
6.解説
セッション2のワークを通した学びとしては、主に「傾聴」「パラフレーズ」の2つに集約されます。傾聴は「全身で聴く」「気持ちを受け止める」試みであり、自分が価値のある存在なんだと話し手が実感することにもつながる事を学びました。また、パラフレーズはいったん自分の枠組みを置いておいて、相手の枠組みで理解しようとすることであり、認識のずれの確認や相互理解の深まりだけでなく、意見の整理や新たな気づきにもつながります。この点は、私もワークで実感したところでした。
また、傾聴やパラフレーズを行う際には、「聴く姿勢と関係づくり」が非常に重要であることも学びました。傾聴やパラフレーズは、話し手のみならず聴き手にとても成長の機会となり、また信頼関係の構築にとっても非常に重要なのです。
7.ふりかえり
セッションの最後には、グループを作ってセッションを通して得た気付きや学びを共有しました。そして、各グループで模造紙にまとめ、グループ同士でお互い見ることが出来るようにしました。グループ内でも他の人の気づきから学びがありましたが、各グループの模造紙を見てみると、セッションでの学びに共通点や相違点があってとても面白かったです。
セッション3「開発問題に合意形成は欠かせない!」
休憩を挟んだら、セッション3に移りました。(休憩中は、同じグループの方同士などで和気あいあいとした時間を過ごしました!)
セッション3は、「開発問題に合意形成は欠かせない!」。担当はやっさんとなおみさんでした。
セッション3は、「自分・人の参加を見るチカラ」をテーマに、2つのワークを行いました。 初めに「油ヤシ農園の開発についての関係者会議」というロールプレイを中心としたワークを、次に「開発ランキング」というワークを行いました。
もくじ
1.「油ヤシ農園の開発についての関係者会議」
2.「開発ランキング」
3.解説
1.「油ヤシ農園の開発についての関係者会議」
会議の参加者は6人で、ある地区の森林における油ヤシ農園の開発が計画されている中、関係者による話し合いの場が持たれることになったという状況を想定しています。そこで、グループを作り、参加者全員がそれぞれどれかの役として会議をロールプレイ形式で行いました。
司会は政府のスニルさん役が担い、開発計画の結論を出すことが目的です。その際、安易に多数決や取引等の手段に出るのではなく、十分に話し合うことが求められました。
どのグループも非常に議論が白熱し、なかなか同じ結論を導き出すことは難しい様子でした。また、途上国で実際に起きているプランテーション開発を巡る利害関係の衝突について、ロールプレイを通してより強く想像する機会にもなりました。
個人及び全体でロールプレイについて振り返ったとき、以下のような意見がありました。
・スニルさん役の人の話の進め方で、議論の雰囲気や流れが全く異なる
・プランテーション開発賛成派の意見が強く、反対派の意見はなかなか通りづらい
2.「開発ランキング」
このワークでは、事前に参加者の皆さん個人で開発の「目的」についての優先順位をつけ、シートに記入してきてもらったうえで、合宿ではグループになって開発ランキングの合意形成を行いました。
開発教育は、途上国の問題の解決に向けた開発について考えるものである以上、「なぜ」開発を行うのかについて考えることは必要不可欠ですが、この点は個々人の価値観や思いの相違が如実に表れる部分です。だからこそ、合意形成もより一層難しいものになってきます。
グループでは、「なぜ1にいれたカードに最も賛成するのか」「なぜ5にいれたカードには賛成できないのか」を中心に、最終的にはグループで一つの開発ランキングを作ることを目的としました。しかし、開発ランキングのワークも、①のワークと同様に、議論が白熱し、グループ内で一つの結論を出すことはなかなか難しかったです。
振り返りのときには、誰の意見が一番強かったか/弱かったか、対立や決定のポイントはどこだったか、またディスカッションを進めるうえで役に立ったり助けになった発言はどんなものだったかを中心に話し合いました。
3.解説
2つのワークを通して、ファシリテーションにあたって必要不可欠なことは「コミュニケーション」「参加」のプロセスの把握であり、そのためにこそセッション2で学んだ「自分の枠組みを知り、相手の枠組みで理解しようとすること」が必要になってくることを学びました。
開発教育におけるファシリテーションでは、議論や合意形成、そして学び続けることへの支援が大きな柱となってきます。特に合意形成については、開発をめぐる問題に常につきものであるからこそ、「色々な立場があっていいよね、難しいよね」で済む問題ではありません。
私は、このことにハッとさせられました。私は大学で開発問題について扱う授業を履修していたのですが、「多様性」というラベルによって、なんとなく「色々な主張や意見があるよね」という一言で済まされてしまう場面が多いと感じていたからです。しかし、開発は利害関係の中で合意形成を必要とするものであり、またその合意形成のプロセスそのものを問う必要があると考えました。
開発教育では、合意形成の上での意見の強さ・弱さに敏感になること、また「参加」の理念を重視します。パワーの強弱で議論への参加が難しくなりうることはあってはいけません。さらに、教育を通して、人々が自分で学んでいく力を得ること、学びの質を豊かにするお手伝いをしていくことこそが、開発教育に求められていることなのだと思います。
セッション4「交流を通して、つながりを深めよう」
セッションの後は、東山荘にてみんなで夕食を取りました。夕食の時間、私は参加者の皆さんに人生相談をしていました(笑) みなさん親身に私の話を聴いてくださり、本当に心強かったです。
そして交流会へ。参加者の皆さんだけでなく、スタッフの方々も含め、みんなで過ごす楽しい時間が始まりました♪
大きい広間をお借りして、飲み物や参加者の皆さんが持ち寄ってくださった全国各地のお土産をいただきつつ、メンバーをたまに入れ替えながらお題に合わせてテーブルごとでおしゃべり。日常のあるあるトピックから、開発教育にまつわるものまで、色々な話が飛び交っていました。これまでのセッションであまりお話する機会がなかった方々ともお話する機会になり、参加者、スタッフ共に仲が深まる機会となりました!
最後に、スタッフ4人の方から謎の出し物が繰り広げられることに。優雅な笛の音と共に、セッションで学んだ「問い」について思い起こさせるような出し物でした!(笑)
次回は、宿泊セッション2日目についてご報告します。お楽しみに!
(報告:ぱる)
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