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理由をください、シニガミさん 〘1〙


「ねぇねぇ、君は死にたいって思わないの?」 

 突然聞かれたその質問に、僕はなんと答えればいいのか分からなかった。

─シニガミサンニアイマシタ─
 ある日の夜、僕のもとにシニガミさんが来た。初めは戸惑いを隠せなかった。死神なんて物語上のものに過ぎない。それに、見た目が想像と全く違ったからだ。眼の前にいたのは小さい女の子。今にも消えてしまいそうな、何処か切なくなるような感じ。その女の子は『シニガミ』と名乗った。 

─シニガミサンハイイマシタ─
 僕は今病院に入院している。とても難しい手術が今度行われるらしい。来週だったかな。病気が進行してる? とかで。よくわかんないけど。だからシニガミさんが来たのかな。僕はもうすぐ死ぬのかな? そんなことを思っていると、シニガミさんは僕に聞いた。
「君は死にたいって思わないの?」
 僕はなんと答えればいいのか分からなかった。そんなこと誰からも聞かれたことがなかったし。何より、僕は死にたい、生きたいというような願望がなかったから。ずっと、すべて成り行き任せだった。死んだならそれでいい。生きれたならそれでいい。手術が失敗したって成功したって、きっと僕は何も思わないだろう。だから僕は、シニガミさんにどっちでもいいと言った。シニガミさんは、何とも言えないような表情で僕をじっと見つめていた。

─シニガミサンハキキマシタ─
 小さい頃からずっと病院にいる。楽しいことなんて一つもなかった。なんというか、生きている心地がしない。
 自分のやりたいことなんか特にない。やりたいことがあっても、制限があるからきっと満足できない。
 友達がいないから話をするのは家族、医者、看護師くらい。僕は話すネタがないから、みんなの話を聞いてるだけ。なんかもう飽きてきた。退屈。気がつくと僕は、自分の心に溜め込んでいたこの気持ちをシニガミさんに打ち明けていた。少しだけ、ほんの少しだけだけど、涙が出ていた。こんなのは久しぶりだな。そしてシニガミさんは言った。
「一週間後にまた来るから。それまでに自分が生きたいのか、死にたいのか、決めといてね」
 そう言った後、シニガミさんはどこかに行ってしまった。天界に帰ったのかな。


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続きはまた今度出します。

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