私の鍼灸師匠④ 鷲尾清一先生
開院して1月余りとなりましたが,ふとしたことで関東鍼灸の鷲尾清一先生を思い出しました。
思えば20年ほど前に,幕張の新校舎に移った関東鍼灸専門学校で非常勤講師をさせていただいていた時代があり,その頃の講師控え室で一番仲良くさせていただいたのが鷲尾先生でした。
当時の私は鍼灸師でもありながら,学生時代に鍼実習あとに体調不良となった記憶がよぎり「施術する」のはいいけど「施術される」のはすっかり苦手になってしまっていました。
しかしその誤った認識を修正・上書きしてくださったのが鷲尾先生の治療でした。
鷲尾先生は大のおしゃべり好き,ダジャレ好きでありながら講義となるとからっきし,聞いていて歯がゆくなるような小声で自信なさげな話しぶりでした。(先生,本当のことながらゴメンナサイ)
しかし治療技術は違いました。
経絡治療に長年携われていたようで,かの高名な岡部素道先生の付き人もされていて岡部先生が地方遠征する際にも同行され就寝前の先生にこわれて鍼することままもあったそうです。鷲尾先生のご自慢は「素道先生に鍼している鍼灸師は俺くらいだよ」というのことでした。
鷲尾先生が鍼するときは当時でも珍しいガラスシャーレを使用されており,抜針した鍼をシャーレに置く度にガラス風鈴のような「チリリン」という音がしました。
その涼やかな音が山しょうの耳の奥に残っております。
20年以上,時が流れ現在では鍼置きのシャーレとしてはステンレス皿も敬遠されるようになりディスポのプラスチック皿が主流となりつつあります。
しかしプラスチック皿にディスポ鍼を置くときのなんとも風情のない音だこと!
私はその音の無粋さに辟易していました。
最近ふとした拍子に鷲尾先生を思いだし,あの涼やかな音も一緒に思い出されて,なんとしてもあの音を聞きたい,できることなら自分の鍼治療ではあの音を奏でながら・・・と思ってしまいました。
そしてオンラインショップで,ガラスシャーレ探し,鍼の方も音のしそうな金属鍼柄の鍼を大量発注してしまったりしてました。
ついに数日前,そのガラスシャーレと金属鍼柄の鍼が届きました!
20年以上の歳月を経ましたが,往年の鷲尾先生の懐かしい施療の音が聞こえてくると期待に胸膨らまし鍼を落としてみましたが・・・・
音が全然違う!!
「チリン」という音ではなく,あえて言えば「コリン」と言った感じでぜんせん涼しい音じゃない!(*_ _)
どうにも思いきれずもう1種類,メーカーの違うシャーレを購入してみましたが2つとも「コリン」でした。
がっくし!
そう言えば2つのシャーレともなんだか軽くて,縁もつるつるして昔のガラスとは明らかに違う感じです。
昔ながらの理科教室にあったような縁がガサガサした重いガラスシャーレってもうないんですかね。
もやもやしながらも,しばらく使っておりますとタイミングや置き場所によっても時々「ちりん」って聞こえることもありました。
時代錯誤かもしれませんが医療安全には十分配慮した上でもうしばらくなガラスシャーレ使ってみたいと思います。