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映画『天安門、恋人たち』感想"モラトリアムのその先"

この物語は、1987年からの10年間、ユー・ホンという1人の女性の人生を追った映画だ。恋愛に軸を置いて。

私はなかでも、後半の、大学卒業後のユー・ホンの生き様に心を打たれた。

天安門事件の渦中を大学生として生き抜いたユー・ホンにとっての自由とは?大学卒業後も、何を求めて生きていたのだろう。

長い学生生活を終え、社会人になり、一人で孤独に生きているユー・ホン。物語の後半になるにつれ、孤独の色が濃くなり、目を背けたくなる場面ばかりだった。それでも彼女を見守りたいと思うのは、私たちも彼女と同じように自分なりの自由を求め、彷徨い続けているからではないだろうか。彼女がどうかこの物語の最後に笑っていることを願いながらスクリーンを見続けていた気がする。

ユー・ホンの「なぜ私はいつも早急に男たちと関係を持つのか。なぜなら身体を重ねることで、あなた達が私の良さに気づくからだ」というセリフが特に印象的だった。
身体を丸裸にしたって心は丸裸にはならないのに、その人の本心まで解った気になるのはなぜだろう。全てを理解することなんてできないのに、理解した気になることで誤魔化している気がする。

「人間は孤独を求め、死に憧れる。でなければなぜ愛する人を傷つけられるのか。」という言葉。ユー・ホンは、他者からの愛を求め、それを隠すための孤独を求めているのではないかという仮説を立てておこう。愛を求めても、孤独を求めてもその人の自由だし。

ん?何言ってんだこれ。



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