ニュートラの学校 ラーニングプログラム:TSURUMIこどもホスピス×京こま作りワークショップ 開催しました
はじめに
早春のある日、大阪にあるTSURUMIこどもホスピス(以下、こどもホスピス)のイベント「春のMeetupピクニック」の一角で、NEW TRADITIONAL出張ワークショップを開催しました。
今回のワークショップは「ニュートラの学校 アウトリーチプログラム」の一環として、京都伝統産業ミュージアム・山崎伸吾さんと、「京こま匠 雀休」こま職人・中村佳之さんを講師にお迎えしました。
日頃は外出の機会が限られる、生命を脅かす重い障がいをもったお子さんとご家族を対象に楽しい体験ができる時間が設けられ、参加したスタッフも思わず笑顔がこぼれました。
こどもホスピスはこんな場所
「TSURUMIこどもホスピス」に行く前は、「ホスピス」といえば緩和ケアや終末期の病棟のようなイメージを持っていましたが、ここは病院ではありません。
重い病気や障がいを持つ子ども達やそのきょうだい・家族同士が出会ったり、病気に囚われることなくゆったりと過ごせるための場所です。
半日ここで過ごした時間は、スタッフにとっても貴重な時間となりました。
建物は丸い芝生広場を囲むように建っており、みんながそれぞれ楽しみながらも、お互いの気配を感じられる設計です。テーマに合わせてさまざまな部屋が用意されていて、どこもずっといたいと思える居心地の良さでした。
京こまを作ろう!
参加されたみなさんの様子
当日はあいにくの雨でしたが、たくさんのお子さんとご家族が来て下さいました。きょうだい達もこどもホスピスにも通い慣れている様子で、スタッフやボランティアとのやり取りから、「ここは安心できる場所」と感じているのが伝わってきました。
ワークショップ会場では、テーブルにたくさんの京こまが。中にはキウイのこまや、三色団子のような色のこまもあって、子ども達に大人気!参加者の皆さんも自然と回してみたり、遊び始めて自然と会話が弾みます。
ただ楽しいだけでなくて歴史的な背景もあるのが、やはり伝統工芸のおもしろさ。こま職人の中村さんによると、「京こま」は安土桃山時代、京都の公家の女性達の遊び道具として作られたのがの始まりで、自分の着物の端切れを竹に巻き付けて作っていたそうです(糊はお米を使用)。
自分で選んで、作ってみよう
いざ、こま作りに挑戦!職人さんが用意してくださった軸に、参加者のみなさんが自分で選んだ4つの色の綿テープを巻き付けてこまを作ります。
少し長めの色テープをクルクルと巻き付ける作業は少し根気がいりますが、必要な子は大人の手を借りて、自分で出来る子はちょっと頑張って、皆さん最後までやり遂げました!
最後に職人さんがビシッと仕上げを。10分ほど乾燥させて完成です。
こまの色の選び方にそれぞれの個性が出ていました。ビビッドな色が好きな子、爽やかな色でまとめる子…ご両親が「これにする?」と問いかけてやりとりをしたり、きょうだいの子も制作に夢中になっていたり。
一緒に作っていても、とても楽しそうな様子が伝わりました。
音で楽しむ伝統工芸品
ワークショップ会場では、お鈴(りん)も並べられて、順番に鳴らすと♪ドレミ~の良い音が響きました。こちらはお仏壇の横に置かれている身近な伝統工芸品ですが、ずらっと並ぶと雰囲気が変わりますね。
音が鳴ると、小さい子も目を輝かせて大喜び。こどもホスピスの看護師さんによると、ここに来る子ども達の中には目が不自由な子もいるので、プログラムには音に関するものも取り入れているそうです。
参加された方からの感想
京都伝統産業ミュージアム コーディネーター・山崎伸吾さん、京こま職人 雀休・中村佳之さんのコメント
--ワークショップを実際にやってみて感じたことは?
山崎さん:「内容はシンプルに、こどもと対等に向き合えるような環境に」と事前に共有いただいたので、とても勉強になりました。京こまはその場で遊べるし、コミュニケーションツールとしても良いですね。
中村さん:ワークショップの内容は普段接するお子さんと変わらなかったですね。ただ、車いすを利用したり酸素ボンベをつけているお子さんもいたので、材料を置く位置や動線の確保は大事だとわかりました。
--今回の体験を今後の活動に活かすとしたら?
山崎さん:京都伝統産業ミュージアムにも出来ることがたくさんあることがわかりました。また、病院や施設でワークショップを行うことは、定年という概念がない職人さんのセカンドキャリアとしてもよい取り組みなのかもしれない、と感じました。
中村さん:今回はご家族も一緒に応援しながら参加してくださったのがよかったです。それだけに、どうやってこの活動を継続していくかは今後の課題だと思います。
おわりに
会場ではシャボン玉おじさんのパフォーマンスやウクレレの生演奏もあり、子ども達にとっても、大人にとっても豊かな時間が流れていました。
TSURUMIこどもホスピスのみなさま、参加者のみなさま、雨にも負けず心晴れやかな1日をありがとうございました!
本イベントは、文化厅委託事業 「令和5年度 障害者等による文化芸術活動推進事業」の一環で実施しました。
レポート:玄番佐恵子(一般財団法人たんぽぽの家 プロジェクトスタッフ)