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[レポート]土と人との関係を、学ぶ。平城京の土でつくる創作ワークショップ

一昨年度、愛知県常滑にて開催した「わたしのニュートラ」のディレクターとしてお招きした高橋孝治さんとは、その後も継続して「素材としての土」という着眼点でとりくみを進めています。2021年11月27日(土)、住んでいるその足元の土を使うという、ここ奈良でしかできないワークショップを平城宮跡歴史公園にて開催しました。

画像8高橋孝治さん

平城京の時代からさまざまな人たちが生活を営んできました。 昔から土はいつも身近にあり、生活の道具や仕事に使われ、今にいたります。 私たちは、障害のある人たちとものづくりを考えるなかで、自分たちの地域 にある素材から新しい可能性を探るプロジェクトをはじめました。このワークショップは私たちの足元にある平城京の土をつかって学び、 触れ、楽しみながら土をつかって布を染めたり、紙を漉いてみます。
ファシリテーター:高橋孝治

はじまりのお話

まずは、高橋さんが用意した紙芝居「はじまりのお話」で、いま足元にある土がどうやって生まれたのか、地球と土と人の関係について学びます。46億年前に地球が生まれたあと、地震、光、風や水といった自然の力で、岩石は砂や粉(粘土)といったさまざまな大きの粒に分かていきます。

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現在の奈良盆地は、古代は湖だったという説があります。古琵琶湖からの水の流れが粘土を堆積させます。時代がすすみ水が少なくなった土地で農耕が営まれます。

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平城京では、生活、祈り、あらゆる場面でやきものが欠かせません。奈良市でおこなわれた発掘調査では、古墳時代から飛鳥時代にかけて横穴墓に土を焼いて作った棺(陶棺)が用いられたことがわかっています。

そして会場に登場した土は、「大阪層群」と呼ばれる地層の泥層の土。平城京があったとみられる範囲の地面から出土品とともに採れたものです。平城京近辺の丘陵では「大阪層群」の土が採れ、暮らしの道具づくりに使っていたそうです。

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平城京の土をつかった創作体験

この平城京の土を使い、奈良にちなんだ麻生地を染めたり、土器のかたちに紙をすいたりしました。

まずは、土を乳鉢で砕きます。

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ふるいにかけて細かくし、水で練ります。高橋さんは「きれいな泥をつくるぞ、という気持ちで楽しんでください」と声をかけます。だんだんと、各自が砕いた土の色の違いが現れてきました。

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ハンカチの全面に土の中の顔料が行き渡るよう、念入りに揉みます。

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土を落として、完成!

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高橋さんは常滑の土で染めた服を日常的に着用していますが、最初の2、3度はほかのものと分けて洗う必要がありますが、そのあとは洗濯機で大丈夫とのこと。

続いて、材料に平城京の土を混ぜた紙漉きです。平城京で出土した、奈良時代の「人面墨書土器」がモチーフになった型を使います。

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ほんのりついた色と、少しざらっとした手触りから、土が混ざっていることを感じられます。

ワークショップに協力してくださっている平城宮跡管理センターの林さんは、「小さい頃から誰もがしていた砂泥あそびの良さを思い出します。服や床が汚れることなど気にしないで楽んでいただき、よい時間になりました。」と感想を述べてくださいました。
愛知県を中心にいくつかの土地でこのワークショップを繰り返している高橋さんによると、この奈良の土はこまやかに砕けやすく、粘土質も多いようだということです。
みなさん、素材としての土とのふれあいを楽しんでくださったようです。高橋さん、ありがとうございました。

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実施日:2021年11月27日(土)
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[ 高橋孝治 ]
(株)良品計画の企画デザイン室に勤務した後、2015年に愛知県知多半島に移住。 中世から窯業が続く常滑に拠点を置き、プロダクトデザインを軸に様々なプロジェクトを行う。 2016-2018年常滑市陶業陶芸振興事業 推進コーディネーター。 2017-2019年六古窯日本遺産活用協議会クリエイティブ・ディレクター。

写真:衣笠名津美

* 令和3年度 文化庁委託事業「障害者による芸術文化活動推進事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)」の一環で実施しました

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