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[レポート]京都・北山杉の里へ:伝統のものづくりと福祉の関わりを考えるツアー

12月16日、床柱などで有名な北山杉の里、中川をはじめとする京都・北山地域を訪ねました。
今回、ご案内いただいたのは、中川や北山地域の文化を保全し継承していく活動を行う北山舎代表の本間智希さん。

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本間 智希さん
1986年静岡生まれ東京郊外育ち。2013年より京都を拠点とする建築リサーチ集団RADに参画。2016年から2019年まで奈良文化財研究所文化遺産部景観研究室に在籍し、北山杉の里・中川に文化的景観の調査研究で通いつめ、中川の空き家を購入。その土地の風土に根付いた生活や生業によって生み出された在野の名もなき建築や風景をこよなく愛する。

北山杉は室町時代から茶室の建築などに用いられ、人の手によって緻密な育成を重ね、和室などには欠かせない要素となっていきました。
生活、文化の変化、また人口減少などにより、ここ北山での林業そのものも他の地域の林業と同様に岐路に立たされています。
しかし、今回、この北山の里の文化遺産の損失を防ぎ、地域内外からの知恵や人とのネットワークも集め、維持・保全・活用に取り組んでいる本間さんの活動に学び、今、そしてこれからの北山杉の展望を知ることから、福祉のものづくりにもいかしていきたいと訪問させていただくことになりました。

風土によって生まれた台杉
京都市内、二条駅で参加者のみなさんと待ち合わせて、30分ほど車で行くと、川に沿って集落がたつ中川地区に到着。
日本海からの冷たい北山しぐれが通り抜けるこの地形だからこそ、細く長い丸太がうまれ、女性が京都市内までかついで運んでいたといいます。
まずは、中川八幡宮にお参りをし、北山杉の大元、母樹とも言われる白杉を見せていただきました。
挿し木で増えていく北山杉は、樹齢600年といわれるこの白杉のまっすぐのびる遺伝子が受け継がれています。
次に北山杉の育成方法として特徴的な台杉のなかでも、もっとも立派な樹齢400年の北山大台杉に。太い幹が台になり、そこから何十本もの細い幹が空にむかってのびています。
杉の産地である奈良の吉野などの広大な森林と異なり、森林面積が狭いという北山の自然背景から生まれてきたという台杉。
本当に台のようなかたちの上にまっすぐに何本もの細い幹がのびる杉が並ぶようすに、参加者一同、不思議な思いで眺めました。

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台杉とは、2メートル以上の位置で多数の幹が株別れして、細い幹が上にむかってのびる特異なかたちをした杉。京都・北山地域で発展し、主に軒を支える垂木材として使用された。北山杉は台杉仕立てで育てられていたが、高度経済成長期に床の間を備えた住宅が多くつくられたときに床柱として台杉仕立てから一本仕立ての杉へと育て方が変わった。現在台杉は庭木としても親しまれている。

天然の絞り模様がついた美しい丸太
中源株式会社の代表の中田治さんには、北山杉の歴史と今のお話をきき、砂で磨いて仕上げる工程も体験させていただきました。
杉を育て枝をうち、伐採、山から運び出すのは男性の仕事。その後、里の倉庫で皮を剥き、菩提の滝の砂で磨き仕上げるのは女性の仕事で、このように仕上げまで産地で行うことも、北山杉の特徴とのこと。
天然の凹凸の絞り模様がついた貴重な丸太や、人工的に模様をつけた丸太もみせていただきました。
今の時代のなかで職人を育てることの難しさもありながら、希少な北山杉の価値を伝えることは木のよさ、木の文化を伝えることでもあることを熱く教えていただきました。

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北山でのかかわりを開くことで文化をつなぐ
その後、本間さんや北山舎が管理する林業倉庫やかつて倉庫と家が一体となった3つの建物を見学。
驚いたのは、その3つの全てが修繕の途中ということでした。
1軒目は大工さんや建築を学ぶ専門学校生とともになおしているもの。
2軒目は、床貼りのワークショップなども行うなど、一般の人も参加して直しているもの。
そして、3軒目は建築設計事務所やものづくりの団体、アーティストと一緒に直しながら、運営して活用していくもの。

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いろいろな人に開き、なおし、つくり続けていくことで、また新たな人がかかわり、それぞれの北山でのかかわりかたをみつけていく。
この本間さんや北山舎の活動は続いていくもので、それがおもしろいのだと実感しました。
福祉にかかわる私たちも、このように自分たちの手を動かしながら、時間をかけて建物にかかわることができたら、福祉の現場でのものづくりや働き方も変わっていくのではないかとも思いました。
そして、ものづくりも建物も人の活動も、その地域の文化、風土、自然と一体であることを実感したツアーとなりました。
私たちが今後、ものをつくる環境、場をつくっていくうえで大切なことを教えていただきました。
本間さん、中田さん、お忙しいなか、ご案内していただき、ありがとうございました。

2022年2月16日追記:北山舎のウェブサイトがリニュアルオープン!内容も充実しています。ぜひご覧ください!

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*この取り組みは、日本財団「障害のある人の表現と伝統工芸の発展と仕事づくり」の助成事業の一環として実施しています。

(レポート:Good Job!センター香芝 森下静香)





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