現在・未来へ希望がないほど加速する、ノスタルジアマーケティングとは
はじめに
こんにちは、NEWPEACE 22年新卒入社の桐野です。近年従来に増して、昔懐かしいノスタルジックなコンテンツが若者を中心に熱を帯びているように感じています。
例えば、純喫茶ブームが起きていたり、
古着ブームが巻き起こっていたり、
1986年に発売された”写ルンです”も、近年大流行しましたね。
今回の記事では、昔懐かしいコンテンツのブームに潜むノスタルジアマーケティングの存在をご紹介すると共に、なぜ日本でノスタルジアマーケティングがワークするのか、その考察を行います。
ノスタルジアマーケティングとは
大手のキャリアサイト、Indeedの編集チームはノスタルジアマーケティングを以下のように定義付け、説明しています。
このノスタルジアマーケティングを用いた例として、西武園ゆうえんちをご紹介します。1950年に開園した西武園ゆうえんち。約70年の時を経て、2021年「心あたたまる幸福感に包まれる世界」をコンセプトにリニューアルされました。
昭和レトロな意匠が先行して目につきますが、本リニューアルを手掛けられたマーケター森岡 毅さんはDIAMOND Onlineのインタビューの中で、本リニュアール設計の根幹は日本人が持つコミュニティ愛にあると話しています。日本人が昭和30年代に対して漠然と抱いている、コミュニティ内が連帯し、それ故に良い時代だったのだろうという過去への憧れを捉え、それを根幹に展開したリニューアル。コロナの影響で人々の行動が制限される中、リニューアル後、一時は13倍のチケット売上を観測するなど、成功に収めています。
そして、ノスタルジアマーケティングの確かな有効性はマーケティング分野のアカデミアの間でも認識されています。米国ワシントン州立大学の研究者Muehling 氏はThe Journal of Marketing Communicationsの中でノスタルジアマーケティングは、広告やブランドを眼差す消費者の態度を著しく肯定的にすると述べています。
また、インドネシアのバンドン工科大学の研究者Nathasia氏はJournal of Business Managementの中で、ノスタルジアマーケティングは消費者に肯定的なブランドイメージを持たせる手法として貢献性が高く、ブランド・ロイヤリティを向上させると述べています。このようにアカデミアの中でもその価値が認められていることからも、確かな有効性を持つマーケティング方法であると考えらます。
日本でノスタルジアマーケティングがワークする理由
これまで、ノスタルジアマーケティングについて国内外のソースを用いて、その例や有効性などをご紹介してきました。最後に、日本に焦点を絞って、なぜノスタルジアマーケティングがワークするのかを簡単に考察します。
ノスタルジアマーケティングは、人々の持つ過去への憧れに光を当て展開するマーケティング手法です。そのようであるならば、過去への憧れが強まれば、その力は加速していくと考えることができます。NBC Newsによれば、ノスタルジアマーケティングのターゲットはミレニアム世代、Z世代とその中心は若者です。日本の若者はいま過去に憧れを抱かないほどに、輝きある今を、そして未来を眼差し生きているでしょうか。
データを見る限りそのようには思えません。内閣府が13歳から29歳までの男女1,134人を対象に行った行った調査によれば、日本社会に満足していると答えたのは、驚きの5.3%。隣国である韓国も同じ傾向を示していますが、欧米諸国と比べるとその数値は段違いで低いことがわかります。
また、日本財団が日本の若者各1,000人を対象に行った調査は、自国の将来に関して、「良くなる」と答えた人はわずか9.8%。また、自分で国や社会を変えられると考える若者も18.3%であったと報告しています。
このように、日本の若者には現社会、そして未来社会の景色は美しく見えておらず、故に、過去への憧れが強まっている=ノスタルジックなコンテンツを好む・ノスタルジアマーケティングが成功しやすい環境にあると考察できます。
終わりに
今回の記事では、ノスタルジアマーケティングに関して、またそれが何故日本でうまくいくのかについて考察を行いました。
私自身もZ世代の1人ですが、幼き頃から「昔は良い時代だった」と、多方面から聞かされ育ちました。ノスタルジアマーケティングで利用される多くの過去を私は生きたことはありませんが、連続的に触れてきた輝かしいとされる情報によって、実態とはかけ離れた美しい過去を形成し、恋焦がれている。確かな感覚としてそれを抱いています。しかし、そうした側面を抱えながらも、やはり希望が当たり前に会話される今を、未来を作りたい、そして作っていくと、私自身、この記事の執筆を通して再度心に決めた次第です。
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