NEW LEADER LIBRARY📚(`22/2)
アリストテレスの奴隷論を起点とする
組織的に一定の人々を排除し、追放する
人間狩りを正当化する西欧文明の側面
『狩猟権力の歴史と哲学 人間狩り』 グレゴワール・シャマユー
平田周/吉岡英樹/中山俊訳(明石書店2,640円)
本書の「人間狩り」という言葉の意味するところは、15世紀のフランス貴族などが植民地で行っていた快楽のために黒人を追いかけて殺戮することから、組織的に一定の人々を排除、追放することまでを含む。
著者はフランスの哲学者なので、人間狩り正当化の起源をアリストテレスにまで遡る。実際、ギリシャの都市国家もローマ帝国も征服した民族を奴隷にして使役することで成立していたわけで、そのための正当化が必要だったのだろう。
そしてそのアリストテレスの奴隷正当化の論理を受け継いで西欧諸国のアフリカでの奴隷狩りが公然と行われ、大航海時代の主要商品として取引された。
もちろん奴隷は有史以来どこにでもいて日本でも戦国時代のころまでは、戦に負けた地方の住民が、戦利品としてさらわれて売り飛ばされたり牛馬の如くこき使われたりした。
しかし、日本では、欧米のように奴隷正当化の論理を応用拡大し、国家社会の土台にまで奴隷制を発展させるまではいかなかった。