貨幣vs暗号資産 価値は共同幻想の上に

1万円は1万円ではない
貨幣と暗号資産はどう違うのか

 日本の1万円札は1万円の商品やサービスと交換ができる。ただし、それは紙幣自体が1万円の価値があるからではない。1万円札を作るには、せいぜい100円くらいの費用しかかかっていない。造幣局が大量生産するからである。すかしや微妙な凹凸、特殊な原料、磁気的な情報などハイテクが投入されており、偽造を難しくしているが、実質的な価値は100円なのだ。それがなぜ1万円の価値を持つのだろうか。

 貨幣になる条件は相互信頼であり、その相互信頼が生じる条件として、適度に希少性がある、変質せずに保存が容易にできる、持ち運びができる、偽造されにくい、ことなどをおおむね備えている必要がある。むろん金やダイヤモンドは、これらの性質をすべて備えている。あるいは、戦国時代に貨幣と言ってよかったコメも、保存に手間がかかる点を除くと条件を満たす。

 金やダイヤモンド、コメは実質的な価値があって貨幣としても使われた。だが実質的価値は、あってもかまわないが、必ずしもなくてもよい。1万円札は単なる紙に過ぎない。

 では暗号資産は、どうなのか。

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