正義を競う「ESG」、ビッグ4も本格参入 「ZARA」リアル店舗をデジタルと結合 麻薬まみれのタリバーン、習近平「共同富裕」の行方
コーク1本、出張の排出ガス
評価基準はてんでばらばら
ひどい夏だった。米国西部や豪州、カナダでは猛烈な山火事が発生し、火に包まれたリットンというカナダの町はたった15分で丸ごと地上から消え失せた。シベリアの泥炭地は1年中くすぶり続け、ドイツはかつてない豪雨に見舞われた。かと思えば、ブラジルや台湾は干上がり、ブラジルに電力危機、台湾には半導体工場の操業低下をもたらした。
異常気象は紛れもない事実だ。ニューヨーク大学のクーニン教授のように「米国の熱波は1900年のほうが凄かった」「地球の気温は1910年から1940年まで上がり続け、その後40年間は下がり続けた」とし、温暖化ガス犯人説に異を唱える向きもあるにはあるが、多勢に無勢。温暖化ガス抑制は今や「至高の正義」であり、「ESG」(環境・社会性・ガバナンス)が世界的な大ブームになっている。
かくてコカコーラはコーク1本が生産・消費の過程で排出する二酸化炭素量を算出し、テスラはモデル3の“生涯排出量”を開示(ただし会社全体としての排出量は未開示)。AT&Tは社員が出張で使う飛行機、鉄道、クルマの二酸化炭素量まで計算している。
大企業はこぞってESGに向けた取り組みをアピールするのだが、問題はその評価が評価機関によってバラバラなことだ。現在、ESGの評価機関として名前が通っているのは、ロンドン証券取引所、MSCI(金融サービス企業、株価指数を算出)、モーニングスター(社債の格付け機関)の3つ。ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙が1500社を調べたところ、3分2の942社が評価機関ごとに違う「格付け」を与えられていることが明らかになった(8月10日付)。