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論文購読備忘録メモ(2022年6月)
この2~3年参加させていただいている土木計画学会に、今年も参加しています。内容が多岐に渡り興味深いですね。
備忘録として今回もいくつかメモしておきたいと思います。
公共交通
・乗用タクシーを活用したフード デリバリーとして継続させるために,タクシー会社が参加を継続できる配達料金について,輸送原価や飲食店等での待ち時間に着目して試算
・運転士の最低賃金を保障する水準まで輸送費用を切り下げて捉えたとき,配達費用を1,200円程度とすれば,タクシー事業者の参画が維持できる可能性が高まると考えられる
・但し,本研究では,配達費用を飲食店も含め,誰が負担していくかの検討までには至っておらず,今後の課題
吉田樹(福島大学)・山口絵里
・大田市の井田地区の月の一人当たり平均利用回数は 6.0 回である
・月額5,000円のサブスク料金で 70名の会員を確保すれば, 本事業によるタクシー会社の利益の大きさは大小あるが,本事業で赤字にならないことが確認される
森山昌幸((株)バイタルリード)・宮下和也・西村智明・藤原章正・谷本圭志
施設立地
・施設の立地確立を拠点に注目して算出
リモートワークの弊害
・移動身体活動量に甚大な影響を与えたのはリモー トワークであったことが明らかになった
・通勤者に比べてリモートワーク者の移動身体活動量は著しく小さく,今後のさらなるリモートワークの普 及によって慢性的な運動不足となる人が増えることが予想
石橋澄子(筑波大学大学院)・安藤慎悟・谷口守
買い物行動とオンラインショッピング
・ニューヨーク市運輸局が提供している NYC Citywide Mobility Surveyを分析データによる研究
New York City Department of Transportation : NYC Citywide Mobility Survey , https://www1.nyc.gov/html/dot/html/about/citywide-mobility-survey.shtml
・コロナ禍前後の買い物トリップ日数の変化に関しては,“コロナ禍前の1週間の買い物トリップ頻度”, “若者ダミー”,“女性ダミー”,“コロナ禍後のステイホームに対する姿勢ダミー”などが統計的に有意な変数(変数が買い物トリップ 日数の変化に強い影響を与えている)
・一方,コロナ禍前の買い物交通機関特性の変数やコロナ禍前の買い物トリップ距離,子どもの有無は,買い物トリップ日数の変化に強い影響を与えていない
・コロナ禍前後のオンラインショッピング日数の変化に関しては,“コロナ禍前の1週間の買い物トリッ プ頻度”,“コロナ禍前の1週間のオンラインショ ッピング頻度”, “中心地隣接居住ダミー”, “中学歴ダミー”,“高学歴ダミー”が統計的に有意な変数
・一方,コロナ禍前の買い物交通機関特性の変数やコロナ禍後のステイホームに対する姿勢は, オンラインショッピング日数の変化に強い影響を与えていない
・「コロナ禍前後の買い物トリップ日数の変化」と「オンラインショッピング日数の変化」との相互関係については,代替関係のようなものがあるとは言えない
・「コロナ禍後の買い物トリップ日数」と「オンラインショッピング日数」の関係については,補完関係が見られた
・「コロナ禍後の食料品・日用品の店頭での買い物日数」と「食料品店からの食料品・日用品デリバリー日数」の関係については,代替関係がみられた
・「コロナ禍後の食料品・日用品の店頭での買い物日数」と「レストラ ンからの食料ピックアップ日数」の関係については, 補完関係が見られた
・外的要因や意識が,コロナ禍前後の買い物行動選択に与える影響の大きさについて,コロナ禍前の様々な属性により分類されたクラスター間で差異があることが確認された
・コロナ禍前の買い物トリップ距離が長いクラスターは,買い物トリップ距離が短いクラスターに比べて,自身の居住地域の新型コロナウイルス感染状況が,コロナ禍前後の買い物トリッ プ日数選択に与える影響が強い可能性がある
・居住地域の新型コロナウイルス感染状況の深刻さが,オンラインショッピング増加につながりやすい可能性があるのは,「郊外部居住以外のクラスター」で,「郊外部居住のクラスター」は,増加につながりにくい可能性
飯塚将太(筑波大学大学院)・坂井孝典・兵藤哲朗
働き方
・ポジティブなコミュニケーションととらえられるものを経験している方が,実は,他者貢献や幸せ実感が低いという結果
・人と人とのつながりや,社会との繋がりを持つことで,幸せを得られるのではないかと想定していたものの,今回の結果から考えると,むしろできるだけ人とのつながりを作ること を避けることで,幸せに働くことができるのかもしれないとすら思われる
・土木事業は現場における地元住民との関わりなしに実施していくことは不可能であるため,そのような状況においても,貢献度や幸せ実感を向上させる方法の検討が必要
安全性
・乱横断事故におけ る最寄り横断歩道までの距離は,50m以内が37.7%,50 ~100m以内が21.2%で,100m以内が60%近くを占めており,わずかな距離を迂回しないで乱横断事故に遭遇し ていることが推定される
萩田賢司(科学警察研究所)・新井棟大・森健二・木平真
スポーツ
・ホームチームを応援する観戦客はその応援するチームの成績がよければ 試合後に会場周辺に留まる時間が長くなる
・(P 値が比較的大きいものの)「逆転勝ち」「大差負け」の係数も非ゼロの値をとっており,「逆転勝ちは,単なる勝ちに加えさらに滞在時間を長くする」,「大差負けは単なる負けに加えさらに滞在時間を短くする」など,結果だけではなく試合の経過も人流に影響を及ぼしている
山下洋史(東京大学)・吉田広顕・西智樹・原祐輔