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【佐竹健のカルトーク】第五夜 心霊スポットの話

 心霊スポットと言えば、どんな場所を思い浮かべるだろうか?

 この質問をすると、必ず廃病院と廃寺・廃神社の類が上がる。廃墟となったホテルや学校、トンネルも多い。これについては、心霊番組でやる企画や恐怖映像で出てくる場所に、上のような場所が舞台であることが多いからだろう。これらの場所が危険なのは、スピリチュアル的な面から見てアウトであることは間違いないが。法的な面はもちろんアウトだ。

 ちなみに、こうした「いわく付き」の場所は、地域に必ず一つはある。現在私が住んでいる場所では、石神井城、五本欅、東池袋公園、四面塔、ビックリガードが近い。

 こうした場所は、あまりに身近にあるにも関わらず、通り過ぎてしまうことが多い。都会の場合は特にそうだ。

 私自身いくつか心霊スポットに行っている。そのときに考えたことや後になってわかったことを、ここに書き記しておく。


 鎌倉へよく行っている。よく行くのは、鶴岡八幡宮、円覚寺、建長寺、高徳院(大仏のあるとこ)だろうか。大体定番スポットか禅寺といったところだ。他にも七里ヶ浜の海岸にもよく行く。

 観光地として有名な鎌倉。だが、心霊スポットが多いことでも知られている。

 そんな鎌倉の心霊スポットの一つに、腹切りやぐらという場所が存在する。

 腹切りやぐらとは、東勝寺で自害した北条一族の霊を慰めるために造られた供養塔のこと。「やぐら」とは崖に作られた墓や供養塔のことを表す。ここでは、落ち武者の霊が出るなどの目撃談が数多くある。

 私はここへ一回足を運んだことがある。

 腹切りやぐらの入り口は山の麓にある、二手に分かれたハイキングコースのような道。そこを左に曲がると、「遊び半分で来ないでください」の看板と供養塔がある場所に出る。ここが腹切りやぐらだ。

 ちなみに北条一族が自害した原因となった戦いは、かの有名な新田義貞と楠木正成の鎌倉攻めだ。詳しく知りたい方は、『太平記』や松井優征の『逃げ上手の若君』の一巻を読むといい。

 私が腹切り櫓を訪れたとき、静かな場所だな、とまず最初に思った。

 人もあまりおらず、周りにある木々の梢から入り込む木漏れ日が気持ちいい場所だった。行ったのが春ということもあってか、小鳥の鳴き声もところどころから聞こえた。

「国破れて山河在り城春にして草木深し」

 腹切りやぐらの立地と逸話は、まさにその一文にふさわしい。

 ここへ来たとき少し気になったのが、入り口にあった、

「遊び半分で来ないでください」

 という看板だった。

 ネットなどで心霊スポットについて調べていると、よく腹切りやぐらの名前が出てくる。それを見た人たちが、夜中腹切りやぐらへ来て騒ぎを起こし、近隣住民の迷惑になったことがあったのか。あるいは、悪質な訪問者によって荒らされたことがあったのか。

 何がともあれ、眠り(死者のそれも含む)を邪魔したり、史跡を荒らしたりするのは良くない。


 心霊スポットで思い出したので、もう1つ語らせてもらおう。高校の初めまで住んでいた自宅の近くに、病院のような場所があった。

 そこは国道の目の前にある。車や自転車に乗っているときに見ると、どこにでもある古ぼけたビルのような感じだった。前に会社のオフィスがあるからだろうか。

 中学生のとき。部活帰りに友達と一緒に帰っていた。

 れいの廃ビルの前を通ったとき、友達がこんなことを話した。

「この廃ビルだけどさ、昔は病院だったらしいんだよね」

「ほうほう」

 心霊スポットが家の近くにあったことに、私は驚いた。同時に、ここで起こる怪異がどんなものなのか、興味が沸いてきた。

 一緒に帰っていた友達は、中のことについて語り始める。

「地下には死体があったり、入ったら誰もいないのにドアがいきなり閉まったりするらしいね」

「怖っ」

 友達の語る怪異に、鳥肌を立てる私。

 ちなみに、地下に死体があったで思い出したが、『地獄先生ぬ~べ~』にもそんな話があった気がする。確か、ホルマリン漬けの古い死体だったか。

「あと、あのビルだけど、取り壊そうとしたけれど、事故が起きたり、関係者が病気になったりしたんだってね」

「普通にヤバいんですけど」

「それでなんだけど──」

「ん?」

「このビルの調査やってみない?」

「本当に!?」

 心霊スポットの調査をしよう、という友達の発言を聞いて、私は正気かよ、と思った。だが、それとは裏腹に、心霊スポットと呼ばれる廃ビルへの興味も増してゆく。廃ビルへの興味が勝った私は、

「気になるからやってみるか」

 と答えた。

「決まりだね」

 そういうことになった。

 廃ビルの調査をしてみた。時々変な音が聞こえてくること、ビルの黒ずみが人影のように見えること。これぐらいしかわからなかった。ちなみに身の安全を考慮して、中へは入っていない。なので、調査よりも観察と言った方がいい。

 調査をしていて、ここが本当に廃病院なのか、という疑問が湧いてきた。

 病院前の駐車場が狭いので、車を停めるとすぐに満杯になるだろうなと思ったからだ。今の私だったら、病院かもね、と受け入れてしまうだろうが。

 このようなこともあり、夕食のとき母親に聞いてみることにした。もちろん、友人との調査のことは話していない。

 私の質問に母親は、

「あれ、近くの病院の看護師さんの寮だったんだよ」

 とあっさり答えてくれた。

「え?」

 私は衝撃を受けた。友達からは病院と聞いていた。なのに母親は、看護師寮と答えた。どれが正しくて、どれが嘘なのかわからない。

「怖い噂」は、元となる話がある。体験者がそれを話したとしても、聞き手が本人と全く違う受け取り方をすることがある。そのため、本人とは違った感じで認識される。それが、聞き手から別の人へ、話を聞いた別の人からまた別の人へ。そうして話が広まっていくいくうちに、体験者の話とは、全く別のものになってゆく。旧看護師寮の話も、私の耳に入る頃には、実態とはかなり違うものとして広がっていた。今となってはそう考えている。


 何回か心霊スポットに行っている人間が言っても説得力がないが、やはり行くのはオススメできない。

 心霊スポットに行ったことで、霊的に取り返しのつかないことになるかもしれないからだ。しかし、心霊スポットには、先ほどの腹切りやぐらのように史跡になっている場所も存在する。なので、絶対に行くな! とは言えない。せめて言いたいことがあるとすれば、

「史跡になっている心霊スポットへ行くとき、現地で変なことはしないで欲しい」

「最低限の敬意や礼儀をわきまえてほしい」

 ということか。

 いずれにしても、心霊スポットには近寄らない方がいい。興味を持ったとしても、ネットで眺めるぐらいが調度いい。


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佐竹健
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