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卒業アルバムの話
卒業式の一週間前ぐらいに、卒業アルバムを必ずもらう。
その中には、学年のみんなの名前と顔写真、今は昔となった思い出たちが、びっしり並べられている。
もらったときは、
「あんなこともあったね」
「なつかしいね」
と長くて短い3年間(あるいは6年や4年間)を振り返る。
そして空欄には、お世話になった友達や知り合い、先輩や先生からサインを書いてもらうのが卒業アルバムの醍醐味。
だが、自分を含めたクラスメートや同級生の顔と名前が載っている。このことを考えると、何かしらのきっかけで有名になったとき、素性を知る同級生に晒される。
「卒業アルバム」は、もらったときは楽しいコンテンツで、卒業した後は個人情報の宝庫になるのだ。
私の卒業アルバム遍歴について話そう。
小学校から中学校、高校に上がるにつれ、卒業アルバムの中にある、私が写った写真は少なくなってゆく。
一番写っているのは、小学校の卒業アルバムだ。
たが、残念ながら、私は、小学校、特に低学年から中学年の記憶がほとんどないので、何も言えない。ただ、言えるのは、卒業アルバムの寄せ書きに、同級生のサインがたくさんあることから、友達が多かったことは確かだ。
中学校の卒業アルバムは、日常コーナーとクラスメートの顔写真欄、そして学校行事のコーナーには、1、2枚だけしか写っていない。
ちなみに部活に至っては、美術部に所属していたのに、驚異の0枚。
このことについて、特に仲の良かった同じ部活の友達2人にも話した。おもしろいことに、彼らも部活のコーナーには一枚も姿が写っていなかったのだそう。
これに関しては、私とその友達2人が、真面目に活動してなかったことが大きい。
写真を選んでいるとき、真面目に活動していない私たちを見たカメラマンや、アルバム製作委員の人たちが、
「こりゃダメだ」
と思って、載せなかったのだろう。それで正解なのだが。
寄せ書きの方は、仲のいい友達数人、知り合いやクラスメートのもので占められている。だが、どういうわけか、先生方からのメッセージもそれなりにある。
中学生のときは、先生方との関係も悪くはなかった。
友達が積極的に話しかけていたので、私もそれに乗じて話しかけることが度々あったからだ。そのため、存在や人となりは、それなりに認知されていた。
高校時代の卒業アルバムには、日常コーナーに1枚ぐらいしか私の姿は写っていない。おまけに寄せ書き欄は一面空白。
日常コーナーに一枚しか写ってないのは、おそらく、学校行事でも目立った活躍はせず、ただただ惰性で学校へ通っていたのが大きい。
カメラマンやアルバム製作委員が、私のように目が死んでいる生徒よりも、イキイキと学校生活を送る生徒が写るものを選ぶのは、当然のことだろう。
寄せ書き欄が空白なのは、単に友達がいなかったのと、卒業アルバムをもらうはずの登校日をサボったためだ。
友達がいなかったのは、自分と合う人間がいなかったこと、そして、学校は勉強するための場所だ、と考えるようになっていたので、作る必要がなかっただけ。ただ、たまに誰かと話したくなるので、話す程度の知り合いなら数人ほど作ったが。
また、同じ高校の同級生よりも、中学校のときの友達や、外の世界の人と接点を持つことの方が、何倍も多かった。
外の世界の人とは、学校の同級生や先生以外の人たち。
彼らはモノのユニークな世界観を持っていて、私にモノの見方考え方の矯正を強いることがなかった。そのため、同級生や先生たちと話すよりも、ずっと自然体でいられた。
登校日をサボった大きな理由は、担任と折り合いが悪かったため。加えて、ストレスの方もかなり溜まっていて、ノイローゼ気味になっていたのもある。
ちなみに私が担任から嫌われていた理由は、対人関係が見えなかったこと、学校側とは相容れないモノの考え方の持ち主だった、ということが大きい。
そのため、担任から脅されたことは、何度もある。
このことでストレスが溜まり、精神的にも危うくなっていった。酷いときは、希死念慮もあった。
「もうあんなところ、行きたくなんかない」
頭の中で、日々その思いが強くなっていったので、私はあえて行かなかった。
仮に行っていたとするならば、寄せ書きの1つや2つ、あったことだろう。
どうやら私は、歳を重ねるごとに、どんどん冷めた人間になっていったらしい。
私はそれでも構わない。
学校という場所が合わないこと、自分が何者かがわかっただけでも、だいぶ生きやすくなったからだ。
それに、卒業アルバムに自分の姿が載ることは、人生において、それほど大切なことではない。本当に大切なのは、自分が輝ける瞬間、大切な人たちと過ごす何気ない時間を、自分の心のアルバムにどれだけ刻めるかなのだ。
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