こどもと「あそびば☺とーはく!」@東京国立博物館に行ってみた
はじめに
5歳児と0歳児を連れて、東京国立博物館(以下、トーハク)の「はにわ展」(2024年12月8日をもって会期終了)に行ってきました。はにわの醸し出す絶妙なフレンドリーさは、幼いこどもたちの心もとらえた様子でした。展示物をじっと見つめたり、同じポーズをしてみたりと、こどもたちなりの楽しみ方を見つけていました。
トーハクでは、はにわ展の期間中、本館1階で「あそびば☺トーハク!」というこどもの遊び場が試験的に開放されていました。子連れで来館した家族が靴を脱いでリラックスして遊べる場所として提供されており、この空間がなければ、私たち家族の滞在時間はずっと短く慌ただしくなっていたと思います。実際に私たち家族が利用してみて、気がついた点をまとめてみます。
ゾーニングと体験
全体のゾーニングは以下のような構成でした。広さは約500平方メートル。場づくりの監修として乃村工藝社の名前がクレジットされていました。多様な遊び場のゾーニングとカラフルで楽しい空間づくりが、訪れる人の興味を引き立てる場となっていました。
5歳のこどもの場合
5歳の子どもは、とーはく古墳をよじ登ったり、こども遺跡(ボールプール)にダイブしたりと、思い切り体を動かして遊んでいました。疲れた際にはリラックスコーナーで博物館関連の絵本を読んだり、はにわの塗り絵をしたりすることができました。場のコンセプトが今回のはにわ展や博物館とうまく連動しており、こどもも「これさっき見たやつ!」と、はにわ展での体験を自然に遊びに取り入れていました。
静と動のアクティビティが両方楽しめることで、こどもたちは空間に飽きることなく長く滞在できていました。開放的な天井高とゆとりある広さも、居心地の良さを高める要素となっていました。
7ヶ月のこどもの場合
上履きに履き替えて入るスペースのため、はいはいをはじめた7か月のこどもも床に降ろして、自由に動き回らせることができました。このようなミュージアム系の外出では、まだ歩けないこどもは抱っこ紐やベビーカーで過ごすことが多く、長時間の場合はこどもに負担をかけてしまいがちです。長時間の抱っこは保護者にとっても大きな負担となります。そのため、親子ともにリラックスして自由に過ごせる場所の存在は非常に重要だと感じました。これは利用者の滞在時間に直接影響する要素といえるでしょう。
ベビーケアルームには、最近の駅や商業施設でもよく見かけるmamaroというポータブル式のベビーケアルームが2台設置されていました。今回初めて利用しましたが、完全個室で落ち着いて育児ケアができました。どこにでも簡易的に設置できる特徴は、このような期間限定のイベントでは特に有用だと感じました。
スタッフさんにあれこれ聞いてみた
こどもたちが夢中になって遊んでいる様子を見守るスタッフの方々に話を伺う機会がありました。驚いたことに、見守りをされていた方々はトーハクの学芸員の方々でした。保育事業関係の委託スタッフではないかと思っていたため、とても意外でした。
学芸員の方々は、普段とは異なるこどもの見守りやケアという業務に、新鮮な気持ちで取り組んでいるようでした。一方で、こどもたちへの声かけの難しさも感じているとのことでした。こどもの遊びへの介入の程度や声かけのタイミングは、保護者でも判断が難しい部分です。
この遊び場は、以前から来館者のニーズとして把握していたものを、試験的に実現させた取り組みとのことでした。外部には委託せず、企画から場づくり、運営までをすべて学芸員の方々が中心となって行っているそうです。利用者アンケートでは、このような場の常設を望む声が多く寄せられているとのことでした。
博物館のこどもほんだな
カラフルなビーズソファやローテーブルがあるリラックスコーナーの壁面には、「こどもほんだな」という名前の本棚が設置されています。学芸員の方々によると、選書もすべて館内スタッフによるものとのことです。主にミュージアムショップの商品を中心に構成されていますが、一部は今回の企画のために新たに購入された書籍も含まれているそうです。
はにわ展に関連する絵本に加え、博物館らしい豊富な図鑑や図録も配架されていました。美術・アート系、恐竜・生物・昆虫といった博物系、伝承・神話などの昔話系の絵本が幅広くセレクトされており、充実した本棚となっていました。気に入った本をその場で読み、後でミュージアムショップで購入できる仕組みは、体験として効果的だと感じました。
外国語の絵本も英語以外の言語が充実しており、海外からの来館者だけでなく、日本人の利用者も興味深そうに手に取っている様子が見られました。英語の絵本を読み聞かせしている親子の傍らで、こどもも興味深そうに見入っていました。
子育て支援とミュージアムアクセシビリティ
「あそびば☺トーハク!」の企画は、博物館による子育て支援のための居場所づくりとして意義のある取り組みでした。この場所があったことで、私たち家族の博物館体験は充実したものとなり、特別展の内容に関わらず気軽にトーハクを訪れたいと感じるほどでした。子育て支援の施策が、ミュージアムアクセシビリティの向上につながることを実感しました。
子育て支援センターのような温かな見守りの雰囲気と、博物館として遊びを通じた本質的な学びを提供する豊かな空間が、居心地の良い居場所を創出していました。
博物館体験の質の向上
この場所の存在が特に有効だったと感じた点は、こどもたちが伸び伸びと自由に遊べる場所が確保されていたことです。博物館では通常、こどもたちは大きな声を出したり走り回ったりすることができず、人混みの中で抱っこされる時間も長くなりがちです。そのため「あそびば☺トーハク!」でリラックスして自由に遊べることはこどもたちにとって貴重な体験となり、保護者としてもこどもたちの楽しむ姿を見ることができて安心しました。
また、この場所でこどもたちの息抜きと保護者の休憩をとることができたことで、博物館により長時間滞在することが可能となりました。実際の私たち家族の行動は以下の通りです
入館
平成館特別展示室で「はにわ展」見学
本館「あそびば☺とーはく!」で遊ぶ&おむつ替え・授乳
中庭のキッチンカーでランチ
東洋館を見学
本館「あそびば☺とーはく!」に戻って遊ぶ&おむつ替え・授乳
退館・帰宅
当初の予定をはるかに超える時間、博物館に滞在することができました。はにわ展の見学だけで帰宅する予定でしたが、魅力的な遊び場があったことで、こどもたちも飽きることなく博物館での時間を楽しむことができました。保護者としても目的としていた展示を十分に見ることができ、満足度の高い体験となりました。
大人が楽しみたい内容と、こどもが楽しみたい活動は必ずしも一致しないため、それぞれが楽しめる場所を用意することが重要だと実感しました。
参考リンク
会場や参加者の様子について詳しくレポートされている記事は、以下のリンクからご覧いただけます。本公開前に近隣保育園の園児たちを招待したイベントの様子が詳細に紹介されています。