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日本酒の飲み頃のピークは、一体いつなのか?

前回と前々回、日本酒には「製造年月」があるが、上槽年月ではなく、日本酒を販売するために酒蔵が瓶詰めをした年月だと言う話をしました。

また、以前、日本酒には賞味期限がなく、古い日本酒に対してポジティブになろう、と提案しました。

さて、日本酒の飲み頃のピークっていつなんでしょうか?

製造年月は、飲み頃を示している?

賞味期限がなくても、製造年月があると、「なるべく早く消費した方がよい」とか、「製造年月から時間が経つほど、劣化して、味が落ちるんじゃないかな」と思ってしまいますよね。
製造年月が、日本酒が瓶詰めされた年月だと知ると、余計にそう考えると思います。

実際、「製造年月から一年以内を目安に消費してください」や「冷蔵保存をしてください」と日本酒の瓶や箱に書かれていることがあります。
酒蔵などのサイトにそのような記載があるのも見かけます。
これは、製造年月から一年程度は、または、冷蔵しておけば、しばらくは製造年月と同じような状態を楽しめる、ということなんだろうな、と。

酒蔵がその日本酒をおいしいと判断した時が製造年月(販売のための瓶詰め年月)になるでしょうから、製造年月が飲み頃を示している、と考えて、間違いではないようです。

瓶詰のタイミングを決めた、意外な理由!

ところが、以前、ある酒蔵に、なぜそのタイミングで出荷したのか、と尋ねてみたところ、「長期間貯蔵している古酒があるなら、当社に販売を任せてみないか、という話があったから」と言われたことがあったのです。
他にも、「資金づくりが必要になったから」とか、「貯蔵熟成のための場所がいっぱいになってきたから」という理由で、古酒・熟成酒が出荷されることもあるそうです。

もちろん、その日本酒を「おいしい」と判断しなければ、出荷しないでしょうが、少なくとも、「いまがおいしさのピークだ」と、積極的に判断した時だけが製造年月ではなかったんです!

そう言えば、以前お伺いした丸彦酒造さんが古酒・熟成酒を出荷した背景も、「たまたま蔵で見つけた」、「地元のデパートの特設販売に協力することした」ということでした。

そもそも、おいしさのピークって?

いま、「おいしさのピーク」と書きましたが、一番おいしい時、というのが、日本酒にはあるのでしょうか?
実は、ある日本酒の古酒・熟成酒を購入した際に、酒店に
「これって、家で熟成させたらおいしくなるかな?」と尋ねると

「うん、もっと置いておいても良いと思うよ、味の変化を楽しんでみて。」と言われたことがあるんです。

古酒・熟成酒として販売されている日本酒のなかには、醸造年度は同じものを、毎年、あるいは、何年かごとに、製造年月を新しくし、熟成期間が長いものほど、基本的には値段を上げて販売されている場合もあります。
値段が高いものほどおいしいとは限らないけど、色・香り・味は変化しつつも、飲み頃がずっと続いている、と少なくとも酒蔵は、判断しているのでしょう

さらに、よく考えてみると、同じ日本酒が、上槽したてのときは「しぼりたて」、秋には「秋あがり」、3年経てば「3年熟成」、5年経てば「5年古酒」、というように、色・香り・味が変化し、製造年月が新しくなり、瓶やラベルのデザインが変わり、違う名前までつけられ、出荷されていることもあるんです。
まるで出世魚ですね。

ちなみに、「製造年月から一年以内を目安に消費してください」みたいな文言は、日本酒に賞味期限はないんだから、なくすように、と酒蔵に積極的に働きかけている酒屋さんもあります。
この酒屋さんは、日本酒は、熟成させれば、多少上下に変化しながらも、概ね右肩上がりにおいしくなっていく、と言っておられました!

さまざまなおいしさ

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そう、「色・香り・味の変化」。
おいしさって、ひとつじゃありませんよね。
製造年月は表示されてるけど、そもそもおいしさのピークなんてなくて、ただ、さまざまなおいしさがある、その中から、自分の好みのおいしさを見つければ、それがその人の「飲み頃」になる。

日本酒って、そんな奥深いお酒なんじゃないでしょうか。

その後

達磨正宗の白木恒助商店 白木善次会長のお話をお聞きする機会がありました。
会長ほどの方でも日本酒の飲み頃のピークは分からない、とおっしゃっていました!


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